クルスク偽情報で「ロシアてんてこまい」
2024.08.18
2024年8月、ウクライナ軍がロシア領クルスク州への侵攻を行った際、ロシアメディアを装って偽情報を流布したことが確認されています。この偽情報作戦にはいくつかの重要な影響がありました。

混乱の創出
 
偽情報により、ロシア国内での情報の信頼性が低下し、一般市民や軍関係者の間で混乱が生じました。

ウクライナ軍はロシアメディアを装い偽非難命令を出したのでした。市民は主要道路へ殺到大渋滞がおきました。また何も知らない国営メディアがベルゴロド方面への避難を促し大渋滞をまねきました。その結果ロシア軍の増援部隊の進行を妨げ、作戦に大きな遅れを生じさせたのでした。

さらにロシア国営メディアはロシアの補給燃料基地などの重要拠点を明かし、そこからのクルクスまでの主要道路の誘導までしていたのでした。ウクライナ軍はロシアメディアが明かした補給及び燃料基地をハイマースで攻撃、命中率90%でほぼ破壊しました。また、増援軍の主要橋脚を100%の割合で破壊、増援軍が到着できない状況の中でクルクスの主要位置全域の占領に成功したのでした。


その中で重要だったのは、ロシア軍の後方指令基地、ここはクルクス全域の地下要塞基地、全長50キロから100キロ、深さ30mにもなるコンクリートで要塞化された、高度なコンピューターシステムを施した指令室、核発射技術システム、核兵器搭載爆撃機指令室、軍事同盟核指令室、この中にはベラルーシ軍事同盟も勿論含まれる。

ベラルーシはそれを知って急遽ウクライナ国境全域から軍を撤退、ロシアとの軍事同盟を破棄すると大統領自ら声明を発表した。


士気の低下

ロシア軍内部での士気が低下し、指揮系統に混乱が生じることがありました。偽情報により、前線での状況が正確に把握できなくなったためです。

またウクライナ軍のクルクス進行でロシアの補給燃料基地など重要拠点を次々ハイマースなどで叩き、ロシア軍の補給に支障をきたした。増援部隊の補給欠乏で作戦に支障をきたし影響を与えることは必至だ。

また、クルスク州内の飛行場つぶしに執着した。クルスク市郊外にあるハリノ航空基地は、ウクライナによる奇襲侵攻の中心地となっている国境の町、スジャから最も近い場所にあるロシアの軍用飛行場だ。

ハリノ航空基地にはロシア空軍の第14親衛戦闘機航空連隊が所在していて、第14連隊に所属する24機のスホーイSu-30SM戦闘機は滑空爆弾を搭載できる。発射後に翼が展開し、衛星誘導で40km以上先の目標に向かって滑空していくこの航空爆弾、ウクライナでの通称「KAB」は、ロシア軍が多用している強力な兵器だ。最も大型のものは重量が3tある。


ウクライナ軍部隊が6日に北部スーミ州から国境を越えてクルスク州に進撃してくると、ロシア空軍は、少なくとも5個の旅団から成る侵攻部隊やスーミ州内のその基地を滑空爆弾で爆撃し始めた。1日の投下数は最大で前線全体の半数に相当する50発ほどに達するらしい。

ウクライナ側はハリノ航空基地の重要性がよくわかっている。だからこそ、侵攻の前の週からこの基地に対する攻撃を激化させていた。

ウクライナとの国境から100kmほどしか離れていないハリノ航空基地は、ウクライナの弾道ミサイルや巡航ミサイル、爆発物を積んだドローン(無人機)など、さまざまな深部打撃兵器の射程内に入る。

攻撃は最近エスカレートした。クルスク州侵攻の6日前の7月31日、ハリノ航空基地の弾薬庫がウクライナの攻撃を受け、一部が焼失した。この攻撃にはウクライナ海軍のネプトゥーン巡航ミサイルが使われたとされ、保管されていた滑空爆弾が破壊された可能性もある。

ウクライナ軍は侵攻地域内からこの基地を攻撃、より短い射程のロケット弾を使うことができる。それには、米国製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から発射されるM30/31弾も含まれる。何れにしてもこの基地はウクライナ軍の恰好の的だろう。

戦略的優位性の確保

ウクライナ軍は偽情報を利用してロシア軍の動きを誤誘導し、戦略的な優位性を確保することができました。

8月6日早朝に始まったウクライナ軍のロシア西部クルスク州侵攻はすでに10日以上が経過した。作戦に参加するウクライナ軍の規模は2万人、国境から85キロメートルの深さまで進み、支配地域は1500~2500平方キロメートルと報じられる。

ウクライナ軍の奇襲攻撃に面子を潰されたウラジーミル・プーチン露大統領は8日、クルスク州のアレクセイ・スミルノフ知事代行とのビデオ会議で「苦境にある人々を援助するため、予期せぬ複雑な任務が課せられている」と述べた上で状況報告を求めた。

スミルノフ氏は「8月6日午前5時、ウクライナ軍が歩兵と装甲車で国境を突破し、ロシア連邦の領土であるクルスク州スジャを攻撃した。ウクライナの破壊工作、偵察グループは、住民を避難させているロシアの民間人や救急車に向かって発砲した」と報告した。

装甲車代わりに市民軍に銀行の現金輸送車が80台以上提供され、ガソリンスタンドには電子戦システムと装甲防御を施すという。プーチンは「必要な人に1万ルーブルずつ支給される。クルスクは困難を克服し、状況を好転させるために全力を尽くすだろう」と応じた。

「必要な場合にはクルスク州に軍司令官事務所を設置する」

14日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はクルスクの戦況について会議を開き、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官から報告を受けた。シルスキー総司令官は「必要な場合にはクルスク州に軍司令官事務所を設置する」と表明した。

ウクライナがロシアのクルスク州への侵攻を正式に認めたことは、戦略的に非常に重要です。以下の点でその重要性が際立っています。

戦略的拠点の確保

クルスク州はロシアの西部に位置し、ウクライナにとって重要な戦略的拠点となります。ここを制圧することで、ロシアの防衛線を突破し、さらなる進軍の足がかりを得ることができます。

ロシア軍の重要な地下司令部要塞をウクライナ軍が獲得、ここを利用したウクライナ軍の地下司令部を設置しました。

地下司令部要塞は、戦闘中の指揮統制を維持するために重要です。これにより、ウクライナ軍は安全かつ効率的に作戦を遂行でき、ロシア軍の攻撃から指揮官を守ることができます。

士気の向上

この侵攻はウクライナ軍の士気を大いに高める効果があります。ロシア領内での成功は、ウクライナ国内および国際社会に対して強いメッセージを送ることができます。

ロシアの防衛力分散

クルスク州への侵攻により、ロシア軍は防衛力を分散せざるを得なくなり、他の前線での防御が手薄になる可能性があります。

このように、クルスク州への侵攻と地下司令部要塞の設置は、ウクライナにとって戦略的に非常に重要な意味を持っています。

ウクライナ軍によるクルスク州への進行は、ロシアの防衛力に大きな影響を与えています。以下のような変化が見られます。

ロシア軍は部隊の再配置をせざるを得ないようでしょう。ロシアはウクライナ東部から一部の部隊をクルスク州に再配置せざるを得なくなりました。これにより、ウクライナ東部でのロシアの攻撃力が一時的に低下します。

さらに防衛線の強化も不可欠になりました。クルスク州内で新たな防衛線が構築されます。特にクルスク原発周辺での防衛が強化されています。

住民の避難もともないます。クルスク州および隣接するベルゴロド州では、多くの住民が避難を余儀なくされています。

ロシア軍の戦力の分散も伴います。ウクライナの攻撃により、ロシアは防衛力を分散させる必要が生じ、他の前線での戦力が薄まる可能性が出てきます。このように、クルスク州への進行はロシアの防衛戦略に大きな影響を与えており、今後の戦況にも影響を及ぼすのは不可分でしょう。

クルスク州はロシアの西部に位置し、いくつかの理由で戦略的に重要です。

クルスク州にはロシア軍の補給路が通っており、特にセイム川に架かる橋は重要な補給ポイントです。この橋が破壊されました。ロシア軍の補給が大きく妨げられます。

ウクライナ軍は8月16日にセイム川に架かる橋をハイマース(高機動ロケット砲システム)で攻撃し、破壊しました。この橋はロシア軍の補給路として重要な役割を果たしており、破壊されたことでロシア軍の補給に大きな影響が出ると考えられます。

この攻撃により、ロシア軍の前線への補給が困難になり、戦況に大きな変化が生じる可能性があります。また、ロシア国内でもこの攻撃に対する反応が注目されています。

クルスク州の地理的な位置はウクライナとの国境に近く、ロシアの防衛ラインの一部を形成しています。この地域を制圧することで、ウクライナはロシアの防衛力を分散させることができます。

士気の向上もウクライナ軍がクルスク州で成功を収めることは、ウクライナ軍の士気を高める効果があります。また、ロシア国内での不安を引き起こす可能性もあり、クルスク州での戦闘は、ロシアとウクライナの交渉において有利な立場を築くための手段としても利用されます。

侵攻地域やその周辺で確認されたウクライナ軍旅団の数は少なくとも5個に増えている。陸軍の4個機械化旅団と空中強襲軍(空挺軍)の1個空中強襲旅団だ。

総兵力は最大で人員2万人、装甲車800両にのぼる可能性がある。このほかに砲兵部隊や防空部隊、ドローン(無人機)部隊、偵察部隊が侵攻部隊の支援できわめて重要な役割を果たしている。

現時点で判明しているクルスク州方面の兵力は、ソーシャルメディアへの投稿や公式メディアの発表などをアナリストが精査し、新たな旅団の参加を確認するにつれて、兵力規模は膨らんできている。

ウクライナ軍はクルスク州の重要拠点をを占領し、ロシア側を捕虜にした。侵攻部隊は長くロシアにとどまるつもりだ。今のところ占領地を拡大するつもりだ。

エストニアの軍人でアナリストのアルトゥール・レヒは「ウクライナが入念に計画を準備していて、この作戦が政治的な効果のあるPR上の大勝利以上のものになることを確信している」とソーシャルメディアに書いている。

ウクライナ軍が6日に始めた越境攻撃に関しては先に、少なくとも3個旅団が直接参加しているか、支援任務に従事していることがわかっていた。陸軍の第22独立機械化旅団と第88独立機械化旅団、空中強襲軍の第80独立空中強襲旅団である。

さらに8日には陸軍の第116独立機械化旅団が、戦車や装甲兵員輸送車でクルスク州に進撃する様子とされる映像を公開した。映像は同旅団のドローンチームであるコーン(Khorne)グループが撮影した。「われわれの車両がロシアの国土をまるでわが祖国であるように走っている」とコーングループはたたえている。

5個旅団以外に、AS-90などの榴弾砲を運用する第49独立砲兵旅団が、クルスク州の戦場から50kmほど離れたウクライナ北部スーミ州スーミ市近郊に布陣している。また、このエリアに第27ロケット砲兵旅団が展開していることもほぼ確実だ。

なぜかと言えば、クルスク州方面に対して米国製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)が活発に戦闘を行っているらしいからだ。ウクライナ軍でHIMARSを運用している部隊は第27ロケット砲兵旅団しかない。ウクライナ軍のHIMARSはGPS(全地球測位システム)誘導のM30/31ロケット弾を80kmくらい先までの目標に向けて発射できる。

コーングループは9日、クルスク州の戦場に向かうロシア軍の車列がHIMARSで攻撃される様子とみられる映像をウクライナメディアに公開した。車両に乗っていた部隊は、州内で総崩れになりつつある防御線の増援に向かっていたとみられる。

ウクライナの旅団は全体として、旧ソ連から引き継いだ兵器もあれば米欧から供与された兵器もある、多種多様な兵器を運用する混成グループになっている。これらの兵器には、米国から供与されたストライカー装輪装甲車、ポーランド製のPT-91戦車、旧ソ連で開発された2S3自動榴弾砲、英国から供与されたAS-90自走榴弾砲、米国で開発されイタリアで改良されたM-109L自走榴弾砲、チェコから供与されたRM-70自走多連装ロケット砲などが含まれる。
2024.08.18 09:51 | 固定リンク | 戦争

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