中国衰退論【反スパイ法】適用か
2024.05.28
※【反スパイ法適用】国家安全部「中国衰退論」への対応示唆、経済安全保障への関与強化

中国衰退論については、様々な意見があります。一部の専門家や分析家は、中国経済が直面している問題に注目し、その衰退を懸念しています。不動産市場の危機、若者の高い失業率、地方政府の借金などが、中国の経済的困難として指摘されています。

「中国の奇跡」は終わった。弱体化する大国に世界が巻き込まれるという地政学リスク

我々が知っていた中国はもう存在しない。

急成長しながら徐々に社会を開放しつつあった中国はもはやなくなった。それに取って代わるのは、萎みゆく経済、そして習近平国家主席という一人の人物の支配で独裁化していく政府だ。

この新たな中国は、以前の中国よりも危険だ。揺らぐ不動産業界と社会の高齢化が、世界経済全体の足を引っ張るおそれがある。産業界を攻撃して外資からの投資を遮断することをも厭わない習氏の姿勢は、世界金融の安定を脅かす。そして軍事力の強化と台湾統一への野望が、地政学的な安定の脅威となっている。

※【反スパイ法適用】国家安全部「中国衰退論」への対応示唆、経済安全保障への関与強化

中国の国家安全部は12月15日、メッセンジャーアプリ「微信」上の公式アカウントで「経済安全保障の防壁を断固として築き上げる」と題した文書を発表した。12月11~12日に開催された中央経済工作会議(注1)を受けて、経済安全保障に対する関与の方向性を述べたもの。

文書では「経済安全保障は国家安全の基礎」とし、その上で、経済分野は大国間競争の重要な戦場となっており、外部環境の複雑さ、厳しさ、不確実さが増しているとの認識を示した。その上で、経済回復をさらに進めるには、国内の困難を克服するとともに、外部からの挑戦にも対応する必要があるとした。

具体的には、中国経済をおとしめる意図を持つ各種の「常とう句」が絶えず現れているとし、その本質は虚偽を述べて「中国の衰退」という「言葉のわな」「認知のわな」を作り出し、中国の特色ある社会主義制度とその進む道を攻撃、否定し、中国に対する戦略的な包囲・抑圧をたくらむものだとした。

外部による中国経済への見方については、過去3年間の新型コロナウイルス感染拡大、地政学的衝突のグローバル経済への影響、「西側」による「デカップリング」の影響などが無視されているとした。また「安全保障が発展にとって代わる」「(中国が)外資を排斥する」「民間企業を抑圧する」といった虚偽を悪意を持って作り出し、「中国は脅威」という使い古された文句で、安全保障と経済発展の間にあるという矛盾を故意に作り出し、扇動し、拡大していると批判した。その上で、このような行為の本当の目的は市場の期待と秩序を乱し、中国経済の好転する勢いを妨げようとするものだとした。

同部の公式アカウントは12月13日から3日連続で、中央経済工作会議に関する内容を掲載している。13日に「4つの面から中央経済工作会議の精神を学習・会得する」と題した新華社報道を引用、14日には「『6つの全面的な把握』により中央経済工作会議の精神を学習し貫徹する」と題した部内会議の内容を伝える文書を掲載した。14日の記事では国家安全を守るための手段として、経済の質の高い発展に向けて(1)安全保障の安定した環境創出、(2)経済・科学技術の自立自強へのサービス、(3)現代化された産業システム建設の保障、(4)高いレベルの対外開放に対する護衛、(5)経済宣伝と世論誘導強化への協力といった点を挙げた(注2)。

(注1)中央経済工作会議については2023年12月14日、2023年12月14日記事参照。

(注2)また、11月2日には「金融安全の断固とした守護者となる」との文章を発表、一部の国が金融を地政学的競争の道具にしていると非難し、「空売り」により国際社会の中国に対する投資意欲を動揺させようとするものだとした。








独ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは14日、「中国は危機にひんしているが、共産主義支配は揺るがない」とするスイスのドイツ語紙、ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングの論評を取り上げた。

論評によると、中国では景気の冷え込みを受け、「政治的自由の代わりに経済的繁栄を得る」という中国共産党と国民の間の暗黙の了解が崩壊しつつあるとの声も多い。しかし、習近平(シー・ジンピン)国家主席の統治基盤は実際にははるかに強固だ。

中国はピークを過ぎ、衰退期に入っていると主張する声が海外でますます増えている。しかし、それは性急な判断だ。

この国は、経済崩壊に直面しているわけでも、景気後退や金融危機が目前に迫っているわけでもなく、成長の鈍化が予想されているにすぎない。

政治的衰退を示すものもない。どの政権も永遠に権力を維持し続けることはあり得ないが、70年余りにわたって中国を統治してきた中国共産党は、経済成長の鈍化と信頼の危機の両方を乗り越えることができる。その安定した権力基盤は、革命の歴史を持つ独裁政治の回復力、適応能力、疑う余地のないパフォーマンス、そして洗練された抑圧システムで構成されている。

中国共産党は文化大革命という致命的な間違いから学び、修正した。改革開放政策の成功により、世界第2の経済大国となり、巨大な中間所得層が台頭した。中国共産党は多くの政治運動を経験し、改革開放が政治変革をもたらさず、むしろ権力基盤をさらに強固なものにする十分な能力を政府に備えさせた。

中国は国民を監視する技術を急速に進歩させ、ハイテク独裁政権を作り上げた。国民には多くの自由があるが、それは一定の範囲にとどまる。抑圧機構は時には巧妙に、時には残忍に行動を起こす。

習氏が、在任期間中に課題が増大する中、自由と改革を脇に置き、安全保障機構の拡大を支持したことは、経済にダメージを与え、構造的な問題と併せて現在の停滞の原因の一部となっている。しかし、党が適応能力を失ったことを意味するわけではない。習氏は驚くべき方針転換でゼロコロナ政策を終了させた。

中国は巨大な経済的困難に直面している。不動産市場の危機、若者の高い失業率、地方政府の借金は、国家指導部にとって政治的リスクとなっている。しかし、このことから衰退していると結論付けるのは言い過ぎだろう。中国衰退論は、2000年代に入ってから国際的な議論に定期的に現れるようになったが、それが誤りであることは常に証明されてきた。中国経済が危機に陥った今、こうした論調は再び活況を呈している。それはある種の満足感が得られる奇妙な希望的観測だ。中国が失敗すれば、世界的な影響が及ぶだろう。中国の衰退に賭けない方が賢明だ。われわれは引き続き、強い中国に期待しなければならない。

しかし、他の観点からは、中国衰退論を時期尚早で危険とする意見もあります。例えば、リチャード・フォンテイン氏は、中国衰退論を前提にすることは米国の政策にとって愚かであり、中国の挑戦に対する必要な力の結集ができなくなると述べています2。また、中国の李強首相はダボスで、中国経済には莫大な潜在力があり、それを選ぶことはリスクではなく、機会であるとアピールしています。

中国経済は依然として膨大な利点を有しており、その経済は非常に大きく、いくつかの指標では米国の経済よりも大きいとされています。中国は120以上の国の主要な貿易相手国であり、人工知能や量子コンピューターといった重要技術分野で革新を続けています。










CNAS理事長のリチャード・フォンテインが、中国衰退論は尚早、危険であり、それを前提にすることは愚かだ、これが米国の政策の前提になれば米国は中国の挑戦に対する必要な力の結集ができなくなると、2024年1月22日付のワシントン・ポスト紙で述べている。

中国の李強首相は、ダボスで、自国を安定した投資先としてアピールした。彼は、「中国経済には莫大な潜在力があり、それを選ぶことはリスクではなく、機会である」と述べた。

 聴衆は懐疑的だった。中国は、過去2年間、成功よりも問題が増えている。そのため中国経済の不可逆的な衰退を心配する分析家もいる。

 しかし、これらの懸念は全く早計だ。さらに、これが米国の政策の前提になれば、米国は中国の挑戦に対する十分な力の結集ができなくなる。近い将来の主要リスクは、中国台頭の頓挫ではなく、米国が必要な力を結集することができないことだ。

 中国は依然として膨大な利点を有する。その経済は非常に大きく、いくつかの指標では米国の経済よりも大きい。

 昨年の中国の国内総生産(GDP)の成長は恐らく米国よりも高いだろう。中国は120以上の国の主要な貿易相手国であり、人工知能や量子コンピューターといった重要技術分野で米国主導の制約を克服し乍ら革新を続けている。

 中国は、これらの利点を戦略的な力に転換しようとしている。米の国防予算よりは小さいが、中国の国防予算は拡大しており、それは少なくとも向こう5年または10年以上継続する可能性がある。

中国は、現在アジア最大の空軍と世界最大の海軍を有し、艦船や潜水艦は370隻以上保有している。新たな弾道ミサイル等核兵器や運搬手段を急速も拡大している。多くの国々で軍事基地や拠点を拡大しようとしている。

 また、習近平の下でその野心は依然として壮大だ。昨年、中国は新興5カ国(BRICS)を拡大した。中国の船舶は、南シナ海で攻撃的な行動をとり、領域主張水域で比船舶に激突する等の行為をしている。

 国防省によれば、中国は、数十回に亘り米軍機に対し危険な妨害行為を行い、中国の戦闘機は今や台湾海峡の中間線を定期的に越境飛行している。先週、中国は台湾の総統選挙の2日後、太平洋のナウルに台湾承認から中国承認に変えさせた。中国の指導者は、特にグローバル・サウスで指導力を発揮している。

 中国は依然として台頭し、地域支配と国際的修正主義に取り組んでいる。しかし、中国の絶対的な力は方程式の半分に過ぎない。この種の競争では相対的な力が重要であり、米の力の強化が極めて重要だ。

 米国の力(経済の規模と活力、軍事的な能力と容量、同盟と連携の強さ、必要な時の政治的結束力)をもってすれば、中国の台頭に十分対応できる。しかし、これらの利点は自動的に結合するものではない。米国は、中国の挑戦を前提に、自らの力の強化を図るべきだ。

巨大な人口と経済圏は続く

正論である。フォンテインは、中国衰退論は尚早で、危険であり、それを米国の政策の前提にすることは愚かだ、米国は中国の挑戦を前提に自らの力の強化と結集を図るべきだと言う。指摘の通りであり、追加することはない。

 中国の力を過小評価してはならないし、過剰評価する必要もない。中国の成長は、発展に連れて必然的に鈍化するだろうし、それに連れて国民統治も一層難しくなるだろう。しかし共産一党統治はなかなか崩れないだろうし、中国共産党はソ連共産党の歴史を反面教師として、反対にそのイデオロギーを強めている。

 西側および中国の周辺国は、当面中国の力を常に警戒する必要がある。そして、その巨大な国土と人口に具現される中国の単なる大きさは将来にわたって力として残るだろう。

 人口減少が指摘されるが、他国と比較すれば中国の人口はいまだ並外れて巨大だ。それらは潜在的な脅威となり、中国は世界の問題として、半永久的に残るのではないだろうか。

 中国が世界を不安定化させないためには、中国との対話と中国自身の変化(国際協調化)が必要である。中国の孤立化は、打開策にならないだろう。幻想は禁物だが、中国と関与し、辛抱強く中国の変化を求めることが肝要ではないか。

近年、世界貿易機関(WTO)加盟後の西側の対中関与政策が失敗したことを指摘する論調が多いが、関与の誤りと言うよりも、そのやり方が問題だったのではないか。西側は、余りに無防備に、競って中国に進出し、結果として中国に最大限利用された。西側の過度のナイーブさが問題だったのではないか。

近年の変化の実態は

中国の変化については、次のようなことが求められるだろう。

 ⑴ 中国の発展自体ではなく、中国が増大する富と力を如何に獲得し、それを何に使うかが問題だ。西欧の技術を詐取し、あるいはネット等で非合法に取得することは止めるべきだ。外国人材の確保についても、国際標準に沿ってやっていくべきだ。

 ⑵国防偏重は修正すべきだ。南シナ海の領有権主張は国際規範と関係裁判所の決定に従うべきであり、南シナ海の軍事化は止めるべき。海外への軍事拠点、ネットワークの拡大にも警戒させられる。今の中国の政策は、一世紀余前の帝国主義的、覇権主義的先例と基本的に違わない。一方的な現状変更は支持されない。

 ⑶大国になったから当然だとの世界観が中国にはあるように思える。可笑しな議論だ。歴史の流れを正しく理解し、戦後世界の足跡をもっと理解する必要がある。戦後の国際社会の発展は、人類共有の歴史であり、価値あるものだ。それは西洋が造った歴史だといった修正主義的議論には違和感を覚える。戦後秩序のルールを守り、協力して発展していくべきだ。更に言行一致が大事だ。

 ⑷人権や民主化は抑圧されてはならない。国家の正直さも必要だ。偵察気球の他国領域飛来やコロナ禍等については問題があった。








このように、中国経済に関する議論は多角的であり、一概に衰退しているとは言えない複雑な状況があります。経済の規模、技術革新、国際関係など、多くの要因が絡み合っています。将来の展望については、さらなる情報と分析が必要です。
2024.05.28 11:10 | 固定リンク | 国際

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