中国がキューバに米通信傍受のスパイ基地
2023.06.30



中国がキューバに米通信傍受のスパイ基地、ファーウェイ従業員の動向追跡米紙報道

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は8日、中国とキューバが米国の通信を傍受するスパイ施設をキューバ国内に設置することで合意したと報じた。米政府関係者の話として、中国が財政難のキューバに数十億ドル(数千億円)を支払うと説明。軍事基地がある米南東部と近いキューバから、中国が通信情報を盗聴し、米船舶の動きを監視するという。

 キューバのカルロス・フェルナンデス・デ・コシオ外務次官は8日、「我々は中南米・カリブ海地域での全ての外国軍の駐留を拒否している。全くの作り話で根拠のない報道だ」と否定。米国防総省のパット・ライダー報道官も8日の記者会見で「我々の情報に基づけば、報道は正確ではない。中国とキューバによるいかなるスパイ拠点の開発も把握していない」と述べた。

アメリカのバイデン政権は、中国が中米のキューバに情報収集のための施設を設け、4年前の2019年に増強させていたと指摘し、キューバ政府に懸念を伝えたと明らかにしました。中国がアメリカ本土に近いキューバで、情報収集活動を活発化させているとして警戒を強めているものとみられます。

アメリカのブリンケン国務長官は12日、記者会見で、中国が中米のキューバに情報収集のための施設を設け、4年前の2019年に増強させていたと指摘しました。

そのうえで「中国は自国から離れたところでも軍事的な影響力を行使できるよう、世界各地で情報収集拠点を拡大しようとしている」と述べ警戒感を示しました。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で「中国がキューバで情報収集能力を手に入れようとするのは新しいことではない」としながらも、キューバ政府に対し懸念を伝えたと明らかにしました。

アメリカ国防総省が去年公表した報告書では、中国軍は、カンボジアやケニア、それにタジキスタンなど各地で軍事拠点の設置の可能性を検討しているとされています。

バイデン政権としては、アメリカ本土に近いキューバで、軍事力を増強させている中国が、情報収集活動を活発化させているとして警戒を強めているものとみられます。

一方、キューバのロドリゲス外相はみずからのツイッターに動画を投稿し「中国のスパイ施設がキューバにあるというアメリカ国務長官の主張は完全なうそだ」と反論しました。

■中国外務省報道官 米側の主張を強く否定

中国外務省の汪文斌報道官は、12日の記者会見で「アメリカ当局やメディアは、中国がキューバにいわゆるスパイ施設を設置したなどと一連の矛盾した情報を拡散した」と述べ、アメリカ側の主張を強く否定しました。

そのうえで「アメリカが、どれだけ中傷しても中国とキューバの友好関係を壊すことはできない。アメリカが、世界各地で大規模かつ無差別に、盗聴や機密情報を盗んでいる事実も隠すことはできない」と反論しました。

■専門家 “今後も拠点として強化していくと考えられる”

中国と中南米の関係に詳しい上智大学の岸川毅教授は「ラテンアメリカの中ではキューバは中国にとって長い間、国交を結んでいるし、思想的にも一緒で、一番情報収集の拠点として使いやすいところだ。アメリカに近くて情報もいろいろあるはずなので今後も拠点として強化していくと考えられる」と指摘しました。

中国は、台湾で「1つの中国」の原則を認めない蔡英文政権が2016年に発足して以降、経済援助などをてこに、中南米で台湾の友好国の切り崩しを進め、ホンジュラスやニカラグアなど台湾との断交を表明し、中国と国交を結ぶ国が増えています。

岸川教授は、中国が中南米への影響力を拡大させるねらいについて「中南米全体が『アメリカの裏庭』と長く言われ、いわゆるアメリカの覇権が一番強力な地域だった。そこに自分たちが確実に存在感を高めているというひとつの宣伝材料の意味もあると思う」と分析しました。

そして、今回の件が今後の米中関係に与える影響については「アメリカは中国を刺激しないような言い方をしている。今後、中国との交渉や会談を進めていく前なので、あまり荒だてない程度にひと言、言ったというように見える」と述べ、限定的だとする考えを示しました。

■ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は21日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の社員が、中国がキューバに設置した情報収集のためのスパイ施設に出入りしていると報じた。米政府関係者が社員の動きを追跡したところ、中国政府が通信会社をスパイ活動に利用している可能性があることが分かったとしている。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は21日、米政府関係者が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の社員らを追跡調査したところ、キューバに設置した中国のスパイ施設に出入りしていることを突き止めたと伝えた。同紙によると、米当局は中国政府がこれらの社員を諜報活動に利用している可能性があるとみている。

そのため、バイデン政権は中国がキューバで情報収集を拡大する取り組みを続けていると警戒。両社を巡っては、米国などが安全保障上の脅威があるとして排除を進めている。これに対し、ファーウェイとZTEは、それぞれ声明で「根拠がない」として、スパイ施設との関与を否定。中国外務省もキューバでのスパイ活動を否定している。

WSJ紙によると、両社は中国へのデータ送信に使用できるネットワーク機器などを専門に扱っているが、傍受に使う高度な機器は製造していないとみられる。

米政府当局は今月10日、同紙が8日に中国がキューバで諜報活動を展開するための基地を置く計画があると報道したことを受け、記事は正確ではないと指摘し、異例の反応を示した。その上で米政府当局は、中国が以前から世界各地で情報収集施設を拡充し、少なくとも19年にはキューバで情報活動をする4つの施設を置き、両国で共同運営しているとの見方を明らかにした。

さらにWSJ紙は20日、中国とキューバがスパイ施設のほかに、共同でキューバに新たな軍事訓練施設を設置する交渉を進めていると、現職と元職の米当局者の情報として報道。中国軍を常駐させ、スパイ活動強化に道を開く可能性があると伝えた。

カリブ海に浮かぶ社会主義国であるキューバと米国・フロリダ州最南端キー・ウェストとの距離はわずか160キロ足らず。目と鼻の先に中国軍が駐留する可能性があるため、米政府は強い懸念を抱いているという。

複数の関係者の話としてWSJ紙が伝えたところによると、中国側はキューバ政府と共同で、米国に近い北岸に軍事訓練施設を設置する計画について協議し、まだ結論は出ていないものの、同紙は「かなり進んだ段階」まで進んでいるようだとした。

同紙はまた、訓練施設は兵士が常駐するだけでなく、米国を監視・盗聴する拠点となりかねないため、計画を察知したバイデン政権はキューバ側に接触し、思いとどまるよう働きかけているとの関係者の情報を伝えた。

米国防総省のシン副報道官は20日の記者会見で、訓練施設の報道について直接言及することは避け、「中国が西半球に関心を持ち、軍事的な拠点を拡大しようとしていることは承知しており、われわれは監視し続ける」と述べるに留まった。

また、中国外務省の毛寧報道官は同日の定例記者会見で、報道された問題について承知していないと述べた。
2023.06.30 21:18 | 固定リンク | 速報

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