コロナ起源「決定的な証拠」
2023.03.03


新型コロナウイルスは「中国」から流出した…米報告書が下したコロナ起源「衝撃の結論」

やはり武漢から流出した…?

 新型コロナの起源について「中国・武漢の研究所から流出した」という説が再び、浮上した。今回の出所は「米国のエネルギー省」である。事実なら、中国に打撃を与えるのは言うまでもない。だが、私はそれよりも「米国の対中攻撃がいよいよ本格化してきた」点に注目する。

 武漢流出説を報じたのは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルだ。同紙は2月26日、特ダネとして「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の起源について、研究所からウイルスが流出した可能性がもっとも高い、と結論づけた」と報じた。

 同紙によれば「ホワイトハウスや米議会の主要議員に最近、提出された報告書から明らかになった」という。ただし、報告書自体は明らかになっていない。

 ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、CNNの番組で「大統領は情報機関に対して繰り返し、全力を尽くして『何が起きたのか』突き止めるよう、指示してきた」と語り、記事の内容を否定も肯定もしなかった。

 米国のジョー・バイデン大統領は複数の情報機関に対して、新型コロナウイルスの起源について調査し、報告するよう指示していた。国家情報長官室(ODNI)は2021年10月、全体をとりまとめた報告書を発表した。

 この報告書は「ウイルスが生物兵器として開発された」という見方を明確に否定する一方、起源については、4つの機関が「自然感染で発生した」とする一方、1つの機関が「研究所からの流出」を指摘し、残る3つの機関は「判断を留保」していた。これらの判断は、2021年8月までに得られた情報を基にしていた。

 米エネルギー省は当時、判断を留保していたが、今回、「新たな情報」を基に「研究所からの流出」と結論づけた、という。この結論について「確度は低い」と評価している。

FBIも「流出説」を支持

 一方、同紙によれば、調査に加わった米連邦捜査局(FBI)は「中程度の確信」をもって、当時から「研究所からの流出」を指摘していた。ODNIの報告書は情報機関の名前を明示していなかったので、同紙は今回、研究所流出説を唱えたのはエネルギー省だけでなく、もう1つの機関がFBIだったことも明らかにした形だ。

 これで8機関のうち、2つが流出説で、4つが自然感染説、残り2つが判断留保になった。

 FBIのクリストファー・レイ長官は2月28日、FOXニュースの番組に出演し「FBIはしばらく前から、今回のパンデミックの起源は武漢にある研究所の事故である可能性がもっとも高い、とみている」と述べた。米国の情報機関トップがウイルスの発生源について、機密扱いの情報を明らかにしたのは、これが初めてだ。

 この発言のタイミングからみても、同紙は報道前にFBIから情報を確認していたのは、ほぼ確実だ。以上から、何が言えるか。

 ホワイトハウスやODNIは、公式にはウォール・ストリート・ジャーナル報道の追認を注意深く避けているが、レイ長官のテレビ発言によって事実上、確認したも同然である。つまり、バイデン政権は「オレたちは、オマエの仕業と知っているぞ」と中国に警告しつつ、情報の核心部分は、まだ手の内を明かさず、隠し持っているのだ。

 なぜかと言えば、「切り札を切るのはまだ早い」と見ているからだろう。

過熱する米中対立

 バイデン政権はこのところ、中国に対して猛烈な攻勢に出ている。

 スパイ気球問題では、中国からの気球が米国の空を飛んでいる事実を早い段階で察知しながら、今回はあえて核関連基地が集中しているモンタナ州の上空に飛来するまで公開せず、その後、派手に撃ち落としてみせた。これで、米国の反中世論は一段と高まった。

 半導体問題では、最先端の半導体や関連技術、製造装置の輸出を禁止し、日本やオランダに同調を迫っている。ウクライナ戦争では、アントニー・ブリンケン国務長官が中国の王毅政治局員に対して「ロシアへの武器供与計画を把握している。実行したら、重大な結果を招くぞ」と警告した。

 ウイルス研究所流出説の暴露も、その一環なのだ。今回はとりあえず、米紙の報道とFBI長官のテレビ発言にとどめたが、いずれ、機会をとらえて「決定的な証拠」を世界に示す可能性がある。サリバン大統領補佐官も先の番組で「結論が得られれば、議会と国民に対して公表する」と明言している。

 米共和党の若手有望株とみられているジョシュ・ホーリー上院議員は3月1日、エネルギー省長官に対して、研究所からの流出を唱えた調査の結論について説明を求める公開書簡を発出する一方、バイデン政権には武漢の研究所とパンデミックの関係に関する情報の公開を求める法案を同僚のマイク・ブラウン上院議員と再提出した。

 この法案は最初、2021年4月に提出され、同年5月に上院を全会一致で通過している。バイデン政権としても、無視できないだけでなく、むしろ中国を追い詰める追い風になるかもしれない。

 これに対して、中国外務省の毛寧報道官は27日、研究所流出説を否定し「中国に対する中傷と政治的な追及をやめよ」と語った。米紙の報道だけならともかく、FBI長官までがテレビで語ったとなると「バイデン政権の意思を正しく認識した」結果だろう。

 研究所からの流出をめぐっては、バイデン政権の調査に先立って、共和党が2021年8月1日、詳しい調査報告書を発表している。私は同年8月6日公開コラムで詳報したが、いまあらためて読み返しても、状況証拠を積み重ねて真相に迫っていく筆致は圧倒的な説得力にあふれている。

 まるで、第1級のミステリー小説を読むような面白さだ。コラムに目を通したうえで、いずれ出てくるであろう、政権の報告書を見れば、中国がいかに偽装工作に苦心していたか、わかるはずだ。
2023.03.03 08:00 | 固定リンク | コロナ

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