中国「990万人コロナ検査」ヤバい事実
2023.03.03

日本人は知らない…中国の「990万人コロナ検査」で見えたヤバい事実

「もう、PCR検査受けた?」

かつて中国では、「もうご飯を食べた?」と挨拶代わりに使われた時代があった。やっと深刻な食糧不足から脱したばかりの1980年代、食卓に様々な種類のおかずが並び始めた時期のことだ。人々が顔を合わせれば、話題の中心は食事。それが人々の最大の関心事だった。

まさに挨拶が世相を反映していたわけが、都市封鎖から1か月半が過ぎた武漢市でも、新たな挨拶の流行が生まれていた。

「もう、PCR検査は受けた?」である。

この挨拶の背景にあるのは、4月から中国で行われた、とんでもない量の「大量検査」だ。4月8日、封鎖が解除されるのと前後して武漢で6人の新規感染者が発見された。これを重く見た当局は、およそ900万人を対象にPCR検査を行うことを決断、実行したのである。

およそ20日間で検査を終えた人数は990万人に達した。感染封じ込めの対応としては、凄まじいレベルの話題だが、不思議なことに日本ではほとんどニュースにもなっていない。

おそらく中国のすることに信頼がおけないのか、政治体制が違い過ぎて日本が参考にすべきケースではないと判断されているのか。

だが後者の理由だとすれば、参考にならないはずはない。

例えば、改めてほぼ全市民にPCR検査を行ったことによって確認された無症状感染者に関する情報だ。990万人のなかで無症状感染者は300人であった。これは一つの目安になろう。

武漢市当局は、この300人と濃厚接触があったと考えられる人々を追跡していて、その数は1174人にのぼった。

マスクや歯ブラシまで検査された

興味深かったのは、衛生当局が新たに見つかった無症状感染者の生活に入り込み、ウイルスがどのように周りに広がっているのか、徹底して調べている点だ。手法はサンプル調査だ。

サンプルの対象はマスク、コップ、歯ブラシ、スマートフォン、床、家具、ドアノブ、トイレ、排水溝といった身の回りの品から、感染者が利用するエレベーターのボタン、共有スペースに置かれた物や通路からも採られた。検査されたサンプルは3343にも及んだが、驚いたことにそのすべてが「陰性」と判断されたことだ。

家具や床、ドアノブやエレベーターのボタンはまだしも、マスクや歯ブラシまでが陰性であれば、隠れた無症状感染者がいても希望の持てる話だ。とりわけコロナ禍以前の日常を取り戻そうとする過程では、人々は大きなプレッシャーから解放される。

また、これとは別に武漢市疾病コントロールセンター(CDC)は都市を対象とした調査も実行。水道水、生活汚水、タクシー、路線バス、地下鉄の駅や車輛、ショッピングモール、レストラン、公園などを無作為に選びサンプルを収集し検査したのだ。一部ペットも検査対象となりサンプル数は2314にも及んだ。だが、これも同じようにすべてが「陰性」と判明したのである。

こうした検査は、言うまでもなく費用で賄われ、その額、9億元(約136億円)だという。

「今回の900万人検査は、人々の健康と安心のためであって、お金には代えられないと政府は説明していますが、そればっかりではないでしょう。潜在的リスクを減らすことができれば、それだけ早く経済活動が再開できるのですから。そのメリットを政府はより重視したはずです」(北京のメディア関係者)

心の封鎖が解除された

いま武漢では、ほぼ全員のPCR検査が実現したことで、「心の封鎖が解除された」との流行語も広がっている。4月8日が物質的な封鎖解除だとすれば、やっと心も解除されたという意味だ。

つまり武漢は、その他の中国の都市と比べてもより確実な正常化へ向けた条件を整えたと考えられているのだ。

それにしても20日で990万人もの人数をどうやって検査したのか。

実は武漢は、この検査を行うために既にあった23の検査機関に加え、新たに40の医療機関・疾病対策センターに動員をかけたといわれている。検査に従事するスタッフも、従来の419人から1451人に増員、検査機器も215台から701台へと増やしたのだ。そして1日当たりの検査数を、従来の30万人から、ピーク時には100万人規模にまで高めたのである。

新型コロナウイルスが感染を爆発させた初期、日本には中国が情報を隠蔽し初動を誤ったという報道があふれた。そのことで日本人の頭は、武漢といえば「隠ぺい」で「感染対策を失敗した」との印象が定着している。

だが現状を見る限り、武漢での感染は日本以上にコントロールされている。そのことは武漢に進出した外国企業が日常を取り戻していることからもわかる。

その武漢が封鎖を解除されるのと前後して緊急事態宣言が出された日本では、安倍政権が対応でもたつき批判を浴びた。その反対に多くの首長が国とは違う対応をして称賛された。大阪の吉村洋文知事がその典型で「大阪モデル」という言葉も生んだ。だが、こうした知事たちの対応のほとんどは、とっくの昔に武漢で実践されているものだということに、日本人は気付くべきだろう。
2023.03.03 07:44 | 固定リンク | コロナ

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