最悪の傭兵集団「囚人を遺体の山に」=ワグネル
2023.01.30


囚人を「強制自爆」、「遺体の山」で銃撃回避…最悪の傭兵集団「ワグネル」の残虐すぎる「手口」

 バフムトの占領に固執する理由

 ここ数ヶ月、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」は、ウクライナ東部ドネツク州のソレダルとバフムトの占領を執拗に試みている。ロシアにとってこの2都市は「戦略的価値」が低いにもかかわらず、莫大な損失を出しながら撤退を拒否し、ジリジリと包囲を固めている。

 軍事アナリストのマイケル・クラーク氏がイギリスニュースサイト「Express.co.uk」に語ったところによれば、ロシアがこうした小さな町を征服しようとするのは、戦略的利益ではなく、ロシアのプーチン大統領の個人的な関心を集めようとする高官同士の「象徴的な内部権力闘争」に基づいているのだという。ドネツクの小都市に頑なに固執することによって、ロシア軍の「戦略を横取り」し、前線の他の兵士を犠牲にしてこの「戦略的袋小路」に目を振り向けざるを得なくしているそうだ。

 バフムートは、ウクライナ戦争の前には、8万人の住民がいたが、いまは1万人程度が街の残っている程度で、両軍の激しい戦闘によって焼け野原、ほぼ廃墟しかない地域になってしまった。ウクライナにとってもロシアにとっても、軍事戦略上の意味合いはなく、象徴的な意味合いしかない。

 ワグネルのリーダー・プリゴジン氏は、ケータリング会社を経営していた時に、プーチン大統領と親しくなったことから、「プーチンのシェフ」と呼ばれている。2016年のアメリカ大統領選挙に介入した罪でFBIに指名手配されている。プリゴジン氏は、ロシア国防省の戦争の運営方法に対する国内批判派の急先鋒となっている。最近、プリゴジン氏は、ロシア政府内での評判が悪くなっているという報道もあり、この都市を攻略できないと失脚するというリスクがあった。

 ■「遺体の山」を利用

 他方、ウクライナは、ゼレンスキー大統領が12月に訪れたことから、この地域をロシアにとられることは心理的な打撃になるかもしれないという指摘がある。

 いずれにしろ、あまり戦争の勝敗にとってはあまり意味はなさそうだが、すでに数千人の兵士が死んでしまった。

 ウクライナ国防情報部長のキリーロ・ブダノフ氏は12月末のインタビューで、2つの都市で死亡した兵士の数があまりにも多くなったため、ワグネルは、地元の銃撃から身を隠すために「遺体の山」を利用するようになっていると述べた。

 ワグネルの戦場での戦いについては、まさに「人柱」ともいえるような人海戦術を採用していることが、オーストリアの軍事専門家トム・クーパー氏に明らかにされている。

 彼(プーチン大統領)はこの戦争で何人殺されるかなんて気にも留めていない。彼は皮肉屋で、遅かれ早かれ「ロシアの刑務所にいる最悪の人間のクズを空にする」と自慢し始めるだろう - ワーグナー(ワグネル)が集めた囚人の多くがこの戦争で殺されるから... したがって、犠牲者がプーチンに対する深刻な内乱を引き起こすようになった場合のみ心配するかもしれない。今のところ、ロシア国民はその地点から「何光年も」離れており、これがすぐに変わるとは思えない。

 GenStab-Uのリリースから推測すると、ワグネルとロシア軍はこの地域(ドネツク)だけで毎日400-600人の兵士(死傷者等)の損失を被っていることになる。この種の、あるいはこのような ビデオを考えると......まあ、驚くにはあたらないが......。

 ■囚人を「自爆テロ」に利用

 ワグネルは具体的に以下のような戦術を用いているようだ。

 まず、囚人を中心とするほとんど訓練もされておらず士気も限りなく低い新兵たちで突撃隊を結成する。この突撃隊に、ウクラナイの前線部隊に対し、自爆テロを敢行する(ただし、突撃隊に、自分たちが自爆テロの集団であることを伝えているかは別だ)。ウクライナ軍は、この突撃隊に対して、反撃をするが、当然ながら、貴重な弾薬を使い、疲弊もする。

 ウクライナ軍に、消耗を強いたところで、最も訓練された傭兵部隊が、第2波、第3波として、攻撃を加えるのだ。この人柱戦術がよほど効果的と考えているのか、最近になって、ロシア軍は「突撃隊」の数を補強しているのだという。

 戦略的には無意味な拠点を「人柱」によって奪取する攻撃と占拠を、ワグネルは自ら「成功」と評し、ワグネルを率いるプリゴジン氏は「ワグネルのほうが正規軍よりも効率的だと主張し、ロシア大統領への圧力を強めている」「クレムリン(ロシア政府のこと)に、領土を奪える唯一の将軍は自分だと主張しようとしている」(軍事アナリストのマイケル・クラーク氏)のだという。

 民間組織でありながら、敗走を続けるロシア国軍を罵倒し、国家権力の一部も任されているワグネルのプリゴジン氏を、プーチン大統領はどう考えているのだろうか。いまや、ワグネルはロシアの囚人を人柱として活用することもできる。

 ■プリゴジンの「評判」とは

 イスラエルに永住する慈善家で(元ロシアの)大富豪レオニード・ネフジリン氏は、ウクライナのオンラインメディア「Obozrevatel」のインタビュー(2022年12月17日)でこう解説している。

 ワグネルを国家という視点を通してみると、何が起きているかを説明するのは難しいし、間違った結論に達するだろう。しかし、ワグネルをマフィアの視点から分析すれば、理解できる。弱っているプーチンには、自分が強いということを示すお気に入りが必要なのだ。プリゴジンは、海外でも国内でも戦場でも、プーチンの命令をなんでも実行し、問題を解決するという役割を担っている。プーチンより若く、狡猾です。

 プリゴジンは今、まさにマフィアの執行者、警備主任の役割を担っている。彼はドンバス、アフリカ、シリアで何万人もの傭兵を雇っていることで有名である。重武装で、危険で、自分の力の及ぶ範囲内で敵をやっつける。そして、彼が嫌いな内部の人間にとっても、彼が嫌いな外部の人間にとっても、危険な男なのだ。

 しかし、プーチンがプリゴジンを常に必要としているかという質問であれば……違うと思います。プリゴジンが常にプーチンを必要としているとは思いません。なぜなら、プーチンが弱くなったからこそ、プリゴジンが強くなった。現在、プリゴジンは世間の注目を浴びる明るい存在である。彼の発言は筋が通っている。クレムリンの腐敗したエリート、役人にとって、プリゴジンは間違いなく「問題を解決する人」なのです。

 ロシアは、1月13日、ロシア軍がソレダルを制圧したと発表した。これは数か月に及ぶ敗退の中では初めての勝利宣言だ(ただし、ウクライナは「戦闘が続いている」としてロシア側の発表を否定)。ロシア国防省は、その前日に、ソレダルの「解放を完了した」と発表し、この勝利はドネツク地域におけるさらなる「攻撃作戦の成功」に道を開くとし、また別の声明で、ソレダルを襲撃した傭兵グループ「ワグネル」は「勇気と無私の部隊」だと賞賛した。これは、ワグネルとロシアの正規軍との間の内紛や対立が取り沙汰される中、異例ともいえる評価であった。

 この動きについて、ロシア軍がワグネルを懐柔にでたとも捉えることができようが、歴史で繰り返されてきた教訓から考えれば、そんなことで飼い慣らされるワグネルではなかろう。いま、ワグネルの動向に世界中の注目が集まっている。
2023.01.30 09:47 | 固定リンク | 戦争

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