フィリピン「悪人の楽園」カジノも
2023.01.29


フィリピンの収容施設は「悪人の楽園」 通信機器入手も容易、オンラインカジノ運営も

全国で相次いで発生している強盗事件をめぐり、犯行の指示役とされる日本人特殊詐欺グループの一部は、フィリピン首都マニラ郊外の入管施設「ビクタン収容所」に拘束されている。施設内は腐敗が横行し、賄賂を出せば、酒や通信機器の入手も容易だ。内部事情を知る男性は管理が緩い様子を「悪人の楽園」と呼んだ。

◆賄賂で「VIPルーム」

施設には不法滞在などで母国への送還を待つ外国人や、各国から指名手配された逃亡犯が収容されている。最大で140人しか収容できないが、400人以上いることが常態化しており、日本人のほか中国人や韓国人らアジア系が多いという。

取材に応じた男性は、2010年代に収容所で施設の管理業務に携わった。男性によると、賄賂は長年にわたって横行しており、収容者はスマートフォンやノートパソコンのほか、酒の入手は容易。賄賂を受けとった職員が外部で直接買ったり、面会者による差し入れを見逃したりしたという。

施設内は2段ベッドが並ぶ劣悪な環境だが、5万ペソ(約12万円)ほどの賄賂を払えば利用できる「VIPルーム」と呼ばれるスペースもあった。

賄賂を受け取った所長が、収容者のオンラインカジノ運営を黙認していたことも問題となった。「いわば無法状態ともいえる状況だったので、(日本人のグループが)施設外に犯行指示を出すことは容易だろう」と男性は話した。

◆「告訴」で収容延長

常態化していたのが、賄賂による収容の〝延長〟だ。内部で「ペイ・トゥー・ステイ(支払いによる滞在)」と呼ばれ、収容所職員側が持ち掛けることもあり、帰国したら厳刑が待っている中国人が1億ペソ(約2億3千万円)を出したこともあった。

一部の収容者は本国への強制送還が避けられないとなると、外部協力者を利用し、自身を暴行や詐欺などの罪で告訴・告発させるという。司法手続きが正式に始まれば、母国への送還手続きは停止状態となるためだ。「有罪となれば、そのまま刑務所に収監される。帰国を引き延ばす手法だ」(地元ジャーナリスト)。

司法省報道官によると、グループのリーダー格である渡辺優樹容疑者は暴行罪で訴追されており、今後、フィリピンで裁判を控えている。外部協力者を利用し、収容を延長させた可能性がある。

司法省は今回の事件を受け、施設内で「携帯電話の使用を禁止する」との通達を出したが、裏を返せばこれまで使用が常態化していたといえる。施設管理に携わった男性は「入管施設や刑務所などは職員の待遇の悪さもあり、賄賂がはびこっている。悪人の楽園は1つではない」と話した。
2023.01.29 15:31 | 固定リンク | 事件/事故

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