億単位の感染者と数百万人の死亡が....
2022.12.31
中国、ゼロコロナ緩和の先に待ち受けるものは....

習近平の「ゼロコロナ勝利宣言」の裏で、億単位の感染者と数百万人の死者が出る試算が出回っている

中国で新型コロナの発症が世界で初めて確認されてから8日で3年が経過した。東大東洋文化研究所の松田康博教授は11月に台湾を訪れたが、新型コロナウイルスを巡る対応に感慨を覚えたという。台湾といえば、今年春まで、徹底した感染抑え込みを目指す「ゼロコロナ政策」で知られていたが、一転、「ウィズコロナ政策」に転換した。マスク着用義務のような行動制限もわずかに残っているが、台湾渡航前の陰性証明書も、台湾到着時のPCR検査や強制隔離も不要になっている。ただし、空港で抗原検査用キットを4回分渡され、1週間の自主防疫期間中に陽性になれば、リモート診療を受けて5日間の隔離生活を送る必要がある。人々はリスクを受け入れ、レストランやカフェではノーマスク姿で会食を楽しむ人々で一杯だった。

松田氏によれば、こうした転換ができた理由は、ゼロコロナ政策とワクチン接種の成功の後に、弱毒性のオミクロン株の大流行を迎えたという「順番」にあるという。松田氏は「この順番は偶然ではなく、政府と住民の戦略と努力のたまものです。ゼロコロナ政策で時間を稼ぎつつ、さまざまな準備をしていました。だから、台湾は2021年に6.57%という高い経済成長率を達成したうえに、22年にソフトランディングに成功できたのです。台湾の政策はもちろん完璧ではありませんが、死亡率の低さ等は世界でもトップレベルです」と語る。

その松田氏が懸念しているのが、中国の「ゼロコロナ政策」の緩和だ。中国では11月25日から、全国各地で「ゼロコロナ政策」に抗議する動きが発生した。人々は白い紙を持ち、習近平中国国家主席の退陣を求める人もいた。危機感を覚えた中国当局は、「ゼロコロナ政策」の緩和を発表した。北京市内では、オフィスビルなどに入る際の陰性証明書の提示が不要になり、飲食店なども営業を再開した。

松田氏によれば、抗議活動に参加した人々は、運が良ければ警告され、ひどい場合は拘束されるという。「まったく、無罪放免ということはありません。参加者に対しては、携帯電話に入っている海外と通信できるアプリを消しているようです」。危険を顧みず、どうして中国の人々は抗議活動に参加したのだろうか。「人間としての我慢が限界に達したのだと思います。ロックダウンによって中国全体が『巨大な牢獄』になっていたわけですから」。松田氏は中国の「ゼロコロナ政策」に反発した人々が提供したユーチューブ上の動画を見ながら、あまりの酷さに、涙したこともあったという。

「ドアを開けて」と懇願する人の悲鳴

抗議活動のきっかけになったのが、11月24日夜、新疆ウイグル自治区ウルムチの高層マンションで10人が死亡したとされる火災だった。マンションは新型コロナの感染拡大防止のため、封鎖されていた。ユーチューブには、外側から針金などで厳重に施錠されたマンションの部屋の奥から、「ドアを開けて」と懇願する人の悲鳴が流れていた。また、甘粛省蘭州では、陰性だった女子高校生が無理やり、隔離施設に閉じ込められたという。松田氏は「当局が、隔離政策の実績を上げるために、無理やり『陽性者』をでっちあげたと言われています。隔離された女子高生が抗議する叫び声がユーチューブで公開されていました」と語る。

習近平氏は来年3月の全国人民代表者会議で、3期目の国家主席に選ばれる見通しだ。少なくとも3期目体制を完成させるまで、ゼロコロナ政策を続けたかったとみられるが、予想外の抗議活動を受けて、政策の緩和に走った。これから、中国はどのような事態に直面するだろうか。

松田氏が憂慮するのが、効果が劣るとされる中国製ワクチンだ。中国はこれまでmRNAワクチンを認可せず、中国製の不活化ワクチンを使ってきた。しかも、若者の接種を優先し続け、高齢者の接種が少ない。国産化にこだわる中国は、mRNAワクチンの自国での製造に強い関心を示していた。11月4日に訪中したドイツのショルツ首相の訪問団には、新型コロナワクチンを開発したビオンテック社も参加したが、少量の輸入と中国在住の一部外国人への接種が認められただけだという。国防予算に匹敵する巨額経費をPCR検査などに使う一方、国民を守る外国製ワクチンは認可されないままだ。

松田氏は「中国人は、ゼロコロナ政策のために、新型コロナの集団免疫がありません。このままでは、台湾のような順調なウィズコロナ政策への転換は難しいでしょう。高齢者の接種率が低いのも懸念材料です。特効薬はまだありませんし、熱冷ましなど対処薬の増産もしておらず、医療体制も貧弱なままです」と語る。すでに、中国内で数カ月内に億単位の感染者が発生し、基礎疾患のある高齢者を中心に百万人前後が死亡すると試算する見方も出回っているという。「中国は今後、感染爆発による医療崩壊に見舞われる可能性が高いです。ハードランディングは避けられません。今はただ、一人でも犠牲者が少なく済むことを祈るばかりです」
2022.12.31 22:51 | 固定リンク | コロナ

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