Q&A

 「色即是音、音即是色」の対応表や、この文書の内容について、読者の方が疑問に思われるであろうことをまとめておきます。

Q.この色と音との対応付けというのは、個人的な感性や、宗教的な思想などに基づくものですか?

A.いいえ。この対応表は、客観的に検証可能な、科学的事実に基づくものです。

Q.「色即是音、音即是色」という名前は、いわゆる「色即是空、空即是色」とは無関係なのですか?

A.全く無関係とは思っていません。だから、このような名前を付けました。

 たとえば、「色即是音」という言葉を解釈してみます。「色」は直接的に目に見え、「音」は目に見えないものです。また、「色」は目の前に何か物質があって初めて感じられるものですが、「音」は空気さえあれば、目の前に何もなくても、風の音や誰かの声などが聞こえるように、どこでも感じられる遍在的なものです (「空気さえあれば」という点がミソですが)。

 これらのことから、地球上においては、色は物質的なものであり、音は空的なものと言えるでしょう。にも関わらず、色と音は互いに対応しあっていますから、異なるものではありません (いわば「色不異『音』」)。むしろ、感覚的な意味では、同じものだと考えることさえできるのです (いわば「色即是『音』」)。

 般若心経に出てくる「色即是空」という言葉の解釈はいろいろあると思いますが、上に述べたような考えは「色即是空」の哲学に通じるところがあるのではないでしょうか。単なる言葉の遊びと言ってしまえば、そうなのかも知れませんが、筆者は少なくとも、二つの言葉・概念は互いに全く無関係という訳ではないだろうと思いましたので、このような名前を付けて資料を公開しています。

Q.同じ音に二つの色が対応している場合がありますが、これはどう捉えたら良いのでしょうか?

A.E や F の音のように、一つの音に二つの色が対応している場合は、曲の流れやハーモニーなどを考慮しつつ、どちらでも好きな色をイメージして良いと思います。 あるいは、二つの色を見比べて、より明るい方の色を採用するというのは、一つの良い方法だと思います。 詳しくは、詳細説明の5.1節を参照してください。

 ちなみに、筆者は通常、 F の音を出すときは紫色、 G の音を出すときはやや暗い赤色をイメージするように心がけています。

Q.ド#とレ♭は、異名同音と言って、同じ音なのでは?

A.平均律ではそうですが、純正律では、ド#とレ♭は一般に同じ音ではありません。

 純正律では、最も美しいとされる和音の響きを狙って、基準となる音の周波数の 3/2 あるいは 5/4 という比率を使って音高 (周波数) が決められます。その結果、異名同音とされる音や、同一の音名の音であっても、調や和音の構成によって、音の周波数が微妙に変わることがあります。

 たとえば、シ♭の場合、レを基準に、その長三度下を意図した場合と、ファを基準に、その完全五度下を意図した場合では、周波数が異なります (ラを 440 Hz とすると、前者は 475.2 Hz、後者は 469 + 1/3 Hz)。

 純正律の音高をあらゆる場合を想定して求めるのは、かなり煩雑です。 本資料では、O#0♭ (C-dur、ハ長調) の場合と、それに加えて長三度の和音のための臨時記号 (#と♭) を想定して、周波数を求めています。

Q.なぜ平均律ではなく純正律なのですか?

A.最大の理由は、純正律のほうが、平均律よりも和音の響きが純粋で美しく、綺麗にハモるからです。声楽では、器楽よりも容易に細かい音高の変化がつけられるので、現在でも純正律は現役です。というか、むしろ平均律よりも積極的に用いられているようです。

Q.「虹の音階」の主音が F なのは何故ですか? As を主音にしてはいけないのですか?

A.主音を F としたのは、「虹の五音階」の音程が日本音階と一致することを強調したかったという理由が一応ありますが (日本音階は、ミを主音とした移動ドの音階として捉えると、理解しやすいです)、つまりは、筆者の好みの問題です。

 従来の音階に、長調や単調、ドリア調やフリギア調などがあるのと同じように、他の音を主音にしても構わないだろうと思います。 たとえば、虹だから赤色から始めたいと思えば、 As を主音にしてもいいでしょう。あるいは、黄色の Ais を主音にしても、良い感じの音階になるようです。

 ただし、音階を使って和音を作ろうとするならば、その音の完全五度上 (属音) が音階の中に含まれている音を主音とした方が良いだろうとは思います (世の中には、エニグマティックスケールやオルタードスケールのように、主音の完全五度上を含まない音階もありますが)。

Q.色覚異常がある場合や、目が見えない人はどうすればいいですか?

A.人によって色の感じ方は違うと思いますから、色の感じ方は人それぞれで良いと思います。

 目が見えない方への適用となると、少し難しくなると思いますが、もしかすると、視覚以外の別の感覚に置き換えるなどして適用できるかも知れません。たとえば、筆者の所属する合唱団の指揮の先生は、目の見えない方には、視覚を触覚に置き換え、「F の気品ある紫色はビロードのような手触り」というように説明されていました。

Q.表の周波数の桁数がバラバラですが、有効数字を明確にしてください。

A.上側の「色→音 の対応表」では、有効数字は5桁です。 下側の「音→色 の対応表」では、周波数は無限精度、波長は5桁です。

 「色→音 の対応表」の周波数の値は、元データの可視光線の波長が測定値なので、有効桁数が存在します。

 「音→色 の対応表」の周波数の値は、測定値ではなく算出値です。しかも、ある桁数で割り切れるので、無限精度で表示可能です。0#0♭ (C-Dur) の純正律の場合、A4 を 440 Hz の整数値と定めると、表に示した音の周波数は、どれもある桁数で割り切れます。 たとえば、C45 の周波数は正確に 580,542,139,465,728 Hz の整数値になります。

 可視光線の波長の値は、光速の有効桁数が9桁なので、少なくとも有効数字8桁までは算出可能です。 しかし、一般的なパソコンのディスプレイやプリンタでは、そこまで精密に色を再現することはできませんので、 精度よりも数値の読みやすさを優先して、5桁で四捨五入しました。

Q.「音→色 の対応表」の色は、連続スペクトル画像の図の中から取ったものですか?

A.「音→色 の対応表」の色は、連続スペクトル画像の RGB 値を取得して、それを元に補間して求めたものです。 そのため、連続スペクトル画像の中には、表と全く同じ色は必ずしも含まれていない場合があります。

Q.ピンク色や白っぽい色はないのですか?

A.白っぽい色は、いくつかの色が混ざってできるものなので、単音に対応する色には、そのような色はありません。 そのような色は、和音に当たるものだろうと筆者は思っています。

ただし、音楽を演奏するときは、必ず倍音が鳴りますから、自分が出した音のイメージと倍音のイメージが混ざり合って、結果的に白っぽい色のイメージができることはあるのではないかと思います。

また、色のイメージは、必ず一つに強要されるというものではありませんので、あなたが曲を演奏したときに、ピンク色や白っぽい色のイメージがふさわしいと感じたのであれば、そのような色をイメージしても、何ら差支えはありません。

Q.音楽を演奏しながら頭の中で色をイメージする場合、必ず表の通りに色をイメージしないといけないのですか?

A.いいえ。必ず表の通りに色をイメージしろと言っている訳ではありません。

 これは大事なことですが、「音 → 色の対応表」はあなたのイメージを限定させたり、固定させたりするものではありません。 音楽を演奏するとき、色をイメージすることで、音高が正確になったり、音楽の表情が豊かになったりするようですが、 この表はあくまで、色をイメージするための補助に過ぎません。

 ですから、あなたが、この表よりも、もっと自分に合った色のイメージを持っているのであれば、必ずしもこの表に従う必要はありません。 たとえば、F の音を出しているときに、もし、紫色よりも水色のイメージが自分の心に浮かんだならば、それも良いでしょうし、黄色のイメージが上から降って来たように感じたならば、それも良いでしょう。

 ただ、筆者が色のイメージを伝える場合は、まずはこの表を使います。なぜなら、この表は使い易いですし、ある程度、本物に近いイメージを伝えられると思っているからです。 たとえば、C の音を ff で伸ばすときには「森が緑の自然に満ち溢れているように」と言ったりしますし、As の音を ff で伸ばすときには「夕焼けよりもさらに真っ赤な色に満ちた世界に飛び込むように」と言ったりします。

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