1999年7月の柿のたねニュース

目黒区の地域福祉を考える会参加報告

「地域福祉計画」と「第二次障害者行動計画」の中間まとめ案の説明会が7月13日(火)の昼間と16日(金)の夜間におこなわれました。柿のたねからは16日に私と無着さんが出席し、昨年11月20日の懇談会同様、「第二次障害者行動計画」について要望書を提出し、それに沿って発言してきました。提出した要望書をご覧になってください。ご希望がある方は柿のたねにご連絡下さい。ここでは中間まとめの中身と問題点について簡単にまとめ私の個人的な感想を書いてみました。

実際に中間まとめ案の計画実績を見ると、高齢者のサービス利用に対し障害者のサービス利用はホームヘルプサービスを除き、ことごとく11年度目標をはるかに下回っている。このことからも現状のサービスがいかに障害者のニーズを満たすには使いにくいシステムになっているか判るが、どのように検討され、反映されたのかが中間まとめ案からは見えてこない。とくにショートステイの改善と指定介護人制度の充実に関しては前回も強く主張したが、ショートステイについては相変わらず病院での入院措置が大半を占め、障害者の日常生活はその期間分断されたままで、この点からも障害者の日常を熟知している指定介護人制度の果たす役割は大きいのだが、その点については一切触れられていない。

また、教育に関しては、幼稚・保育園では統合教育がうたわれているにもかかわらず、小・中学校では教師の福祉教育、子どもの交流にとどめられ統合の文字は消えてしまう。現在普通学級に通っている障害児は多数いるはずなのだが、その存在は全く無視された形だ。学校現場で分離教育を基本としている現実からは健常者と障害者の対等な関係など生まれてこないと思うのだが、相変わらず文部省・教育委員会の姿勢は頑固でノーマライゼーションの言葉も空々しく聞こえてしまう。真剣に平等な社会づくりを考えるのであれば、ぜひとも学校現場における統合教育の推進を考えてほしいものだ。せめて公共の場である学校のバリアフリーについては防災拠点という観点からもトイレの改善やスロープの設置を進めてほしいと思う。

第三者機関による苦情処理(オンブズマン制度)の検討が今回盛り込まれた点については評価できるが早急な実現化を望みたい。

(櫻原)

 以下に要望書で出した項目だけ上げておきます。

  1. 指定介護人登録制殿充実
  2. 知的障害者の24時間介助制度の新設
  3. ガイドヘルパーの新設
  4. ショートステイの改善・充実
  5. レスパイトケアについて
  6. グループホームについて
  7. 雇用について
  8. 統合教育の推進
  9. オンブズマン制度の確立について

愛成学園(裁判)に関する集会に出席して

去る6月12日(土)四谷の主婦会館プラザエフにおいて、愛成学園事件(裁判)に関する集会があり、それに出席した。

愛成学園事件(裁判)の経過と内容とは

愛成学園は中野駅北口の商店街のすぐ近くにある女子のみ(定員60名)の知的障害者更正施設で発足してから40年。同性介護のため職員40数名中男性職員は5名。

事件の発端は今年2月2日及び2月5日施設内において某男性職員が利用者Hさんを自分の指導に従わないということから強く叱責した。Hさんが自傷行為を始めたため、それを制止する目的で馬乗りになって両手首を持って押さえつけたり顔面を殴りつけるなどの暴力行為をなし身体に傷害を負わせ、なおHさんに暴力の事実を「他人に喋ったら創作班をやめさせる」という脅しのような口止めもした。

2月6日他の職員が身体の傷や痣を見つけ暴力行為が発覚。ただちに職員らはHさんの家族に連絡。7日に家族が来園、職員立会いの下Hさんは某職員から受けた暴力状況を語った。

2月8日学園は某職員を呼び出し家族に謝罪させた上これまでの様々な違反行為を考えれば福祉施設の職員としての条件を欠くとして退職勧告をした。某職員もその時は家族に対して謝罪し自ら責任をとって退職する旨を述べた。

しかし2月9日、前日の退職を翻し退職を解雇にしてくれと強く申し入れてきたので懲戒解雇とし解雇通知を交付した。すると翌2月10日某職員は弁護士を同行して、不当解雇撤回を要求し全国福祉保育労働組合地方本部から「違法無効な解雇であるから直ちに職場復帰を認めろ」という内容の要求書や団交申し入れ等がなされた。

某職員は3月9日東京地方裁判所に雇用上の地位の確認と毎月の賃金の支払いを求める「地位保障等仮処分命令申立」の裁判を訴えてきた。裁判の申請書には解雇理由としている「暴力」とは体罰や虐待等暴力と評価すべき性質のものではなくHさんが納まらないためやむをえず、いわば正当防衛ないし緊急避難的にHさんに対して有形力を行使したに過ぎない。自分はHさんとの関係で見て見ぬ振りをするのではなく真正面から真摯に指導した。Hさんの更正と可能性を信じ決してHさんを見捨てるようなことはしなかったと主張し「有形力の行使」を正当化している。

これは氷山の一角、この学園に今まで溜まってきた膿が表面化したに過ぎないと学園側の弁護士は語っている。東京都の施設山梨聖ヨハネ学園や福島白河育成園の虐待事件等どうして障害者施設での暴力は尽きることがないのか。甚だ残念なことだ。一般社会では自分の言うことを聞かないと言って相手を叩くのは立派に刑事事件になる。知的障害者施設ではちょっと叩くくらいは愛のムチ、正当防衛で他の利用者へ及ぶ危害を防ぐため「やむを得ず」叩くことが職員や健常者(強者)の側の論理として正当化されることが多い。健常者は自分の立場や理由を口で上手に説明できる。事と次第によってはウソだって上手に言える。

知的障害者は世の中で生きていくには弱者の側に立つ。上手に自分の思いを口で表現できない、喜びも不満も相手に対する抗議さえも態度で表現することが多い。6月12日の集会に講師として出席した石井鉄夫氏(白梅短大学長)は安心できる人のところにいる限り「自傷」はおきないと断言しておられた。

施設職員は障害者の面倒をみる立場(愛成学園では職員は利用者に対する援助者と位置付けた)にありそれが生活費を稼ぐ手段でもあるのだ。施設の仕事の内容は当面目に見える生産性に直接結び付けて考えにくいが自分のためにも誠心誠意働いてもらいたいものだ。だがそこで一人ふたりの職員が正義や善を主張しても利用者や親がもの言わぬ体質の密室性の高い施設だったら少数の側がつぶされる恐れだってあるかもしれない。とにかく密室性はよくない。どんな施設や病院やグループホームでさえも常時第三者の「目」が必要であると痛感した。全く施設や障害者のことを知らない人がオンブズマンとして入り新鮮な目で見てもらう事が最善の策ではないかと思う。

(無着麗子)

夏合宿参加感想

初めて夏合宿に参加したのは、2年前でした。その時はただ無我夢中で3日間を過ごして、疲れを感じる余裕もありませんでした。でも、夏合宿に参加してから、いろいろと考えさせられるようなことがいっぱいあって、自分が成長したような気がしました。だから、また何か収穫があるかなぁと期待してというより何か収穫しようと思って参加しました。でも、初日、久しぶりに障害者の人と接して、どこまで手を借してあげればよいのか、その人はどこまでなら自分でできるのか、ぜんぜん分からなくて、オロオロしてばかりでした。けれど、時間の経つうちに、その人を障害者と見るのではなく、その人を"その人"としてみて、接していけばいいんだなぁと思うようになりました(とても抽象的で分かり難い表現でごめんなさい)。でも、すごくそういうふうに感じてそうしたら"あーこの人とはこういう接し方があるんだー"といろいろ見えてくることがたくさんありました。今回は小さい子もたくさん参加していて、初めて参加したときよりもにぎやかだったと思いました。そして、とても疲れました。特に介助の当番になった時は時間が経つのがとてもゆっくりだった気がしました。けれど、今、合宿から帰ってきて、すごく充実感を感じています。参加できたことが嬉しいです。よく分からないけれど、とにかく嬉しいです。また成長できたでしょうか?今、看護短大に通っている私ですが、将来、この経験はきっといかせるだろうと思っています。

(山田恭子)

恭子さんに誘われて、将来、看護婦を目指す私にとってよい機会だと思い合宿に参加しました。私は、今まで障害者の方々と接する機会が1度もありませんでした。だから、なんの知識も無く何をしたらいいのか分からず、不安でした。戸惑うことも多かったです。特に、自分がどこまで手を出していいのか分かりませんでした。必要以上に手を貸すことは、その人のためにならないとは思いつつもついつい手を出してしまいます。しかし、その人に何ができて、何ができなくてというのが、ある程度一緒にいないと分からないので慣れるまでが大変だと思いました。学校で、排泄や衣服の交換の勉強をしたけれど、実際にやってみるととても大変でした。まして、自分より年齢が上の方の介助というのは抵抗がありました。しかし大変な事も多いですが、喜んでくれるとやはり、嬉しいです。つかれていても頑張ろうと思います。この合宿で考えさせられることも多く、ますます良い看護婦になろうと思いました。本当に、良い経験になりました。

(山崎麗子)