聖書の学び-使徒言行録
初代の信仰に学ぶ

No.25

 あらゆる国の人々に
(使徒言行録8:26−40)

 「フィリポは宦官に洗礼を授けた。…宦官は喜びにあふれて旅を続けた」

 フィリポは、主の天使によって不思議な指示を受けました。サマリアを出て、エルサレムから南へ、ガザ行き道へ行くようにと命令されたのです。あまり人通りのない寂しい道でしたが、フィリポは馬車に乗っている一人の外国人に出会いました。この人はエチオピア人で、「カンダケ」と呼ばれる女王の宦官でした。エチオピアは昔からユダヤ人の影響を受けていたので、宦官も旧約聖書を知り、わざわざユダヤ人の礼拝のためにエルサレムに上ってきました。
 

 宦官は馬車の中でイザヤ書53章の有名な「苦難の僕」の預言を読んでいましたが、その意味は彼にとって謎のようでした。それで彼はちょうどそばによって来たフィリポにその説明を求めました。フィリポは、神さまご自身がこの出会いを備えてくださったと悟り、イエス・キリストについて教え始めたのです。「羊のように屠り場に引かれて行った」方はイエス・キリストを指し示しています。エルサレムの神殿で羊がいけにえとして捧げられたように、主イエスは私たちのために十字架で命を捧げてくださいました。それは私たちの傷がいやされるためでした。
 

 宦官はフィリポの証しを受け入れ素直に信じていましたが、彼の心にはまだ暗い影がありました。「洗礼を受けるのに何か妨げがあるでしょうか。」彼の質問の背景にはユダヤ人の厳しい律法がありました。宦官である彼は、ユダヤ人に改宗することが出来ませんでした。
 

 しかし洗礼を受けるのに信仰があれば充分です。宦官の信仰告白「イエス・キリストは神の子であると信じます」(8:37、272ページ参照)は一番古い底本には載っていませんので、後で付け加えられたと見られます。しかしそれは古くから伝わった洗礼の時の信仰告白です。宦官もこの信仰に導かれ、洗礼によって新しい神の民に加えれられ、喜んで旅をつづけました。伝統によりますと、彼は自分の国では最初の伝道者になったと言われます。
 

 宦官の話しは、初めてユダヤ人やサマリア人以外の人が洗礼を受けた大事な記録です。イエス様の遺言のように、福音はあらゆる国の人々に宣べ伝えられるようになりました。


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