キアゲハ 〜2〜

 2003年5月1日、蛹を冷蔵室から取り出す。

  5ヶ月ぶりに蛹を冷蔵室から室内に戻しました。蛹の支柱にしていた割り箸などはカビが生えていましたが、蛹にはついていません。 うまく越冬できたかな。


 2003年5月14日、蛹の色が変化。

  少し前から蛹は黒っぽくなってきているように感じていましたが、この日はキアゲハの羽の黒い筋模様を思わせるものが 透けて見えるようになりました。

キアゲハ、蛹


子どもの頃の記憶では、朝目が覚めるともう羽化してしまっていたので、気温が上がり始めると「朝が来た」と感じて羽化するのではないかと 考え、早朝観察することにしました。


 2003年5月15日、羽化。

  朝6時、羽化していませんでした。6時半、変化なし。しかし、7時半に見るともうすっかり羽化が完了していました。

キアゲハ


幼虫の脱皮も素早く行われましたが、羽化もせいぜい一時間で終了してしまうようです。 最も外敵に弱い瞬間でしょうから、さっとすませてしまうのでしょう。残りの3体で羽化が見れればいいのですが。  なんとなく羽化は早朝だけ行われると思いこんでいたのですが、この日続々と羽化。昆虫は日積算温度(毎日の気温の和)が ある一定に達すると次のステージに進むという定説を証明する結果となりました。(4体目のみ5月17日に羽化。)
羽化後、じっとぶらさがって支脈に体液を送り羽を伸ばします。このとき、昆虫自体はぐっと踏ん張っているそうです。 羽化が完了するとおしっこをして余分な代謝物を排泄します。


 2003年5月15日、3体目羽化。

  2体目は10時頃、3体目が12時半頃でした。

キアゲハ


3体目はなんとかまだ羽が伸びきらない状態を見ることができました。

キアゲハ

キアゲハ

しかし、この3体目はこの後2時間経っても羽が伸びきらず、よく見ると口吻もきゅっと丸まらずにだらしなく垂れ下がっていました。 脱皮に失敗したようです。
羽化した個体は観察・写真撮影後外に放してやりましたが、この3体目だけは生き延びれないでしょう。


 越冬について。

  前ページで「秋の幼虫は蛹になって越冬するようにプログラムされている」と書きました。 こう説明すると「幼虫が秋の寒さを感じて冬の訪れを悟り、越冬のプログラムが作動するのかな」と誤解させてしまう場合もあるようです。 しかし気温を感じて冬が来ると判断するのならば、飼育して室温に置いた蛹は越冬せずに羽化するはずです。 実際には秋の幼虫をどんなに暖かい室内に置いても羽化しません。幼虫(蛹)はどうやって冬の訪れを認識しているのでしょうか。 答えは「日長」です。
一日のうちの昼間の時間が、ある一定時間よりも短くなると「もうすぐ冬が来る」と感じ、蛹で越冬するプログラムが作動するのです。 このプログラムが作動すると、低温にさらされる期間(冬)を経てから適当な暖かさにならないと、羽化しません。 昆虫の種類によって終齢幼虫のときに日長が短い(短日)刺激を受けると越冬蛹になるもの、もっと若い幼虫のうちに越冬蛹になることを決めるものがあります。 また、カイコの成虫は短日によって越冬卵(冬を越して春が来ないと孵化しない卵)を産みますし、ショウジョウバエのように日長とは全く関係なく気温が活動に好適な限り動き回り繁殖し続けるものもあります。 キアゲハの場合、どの時点で越冬のプログラムが作動するのか、今回の観察ではわかりませんでした。 メジャーなアゲハ類なので、既知なのではないかと思うのですが、ざっと調べたところではわかりませんでした。 何頭もの幼虫を色々な短日処理で飼育すれば、「どの時点でプログラムが作動するか」はわかるはずなのですが、そういう実験をしようと 思うと片手間では難しい。
 しかし、何時間以下の短日でプログラムが作動するのか、については、10頭くらいの幼虫を集めることができれば、 中学生の自由研究として面白いレポートが書けそうです。(小学生の場合は大人の指導がなければ難しいでしょう。) 実験計画の例を挙げてみましたので、興味のある方は試してみてください。


参考文献
「昆虫時計」 D.S.ソーンダース著 正木進三訳 サイエンス社


 この「短日」による季節変化への対応ということは、昆虫だけでなく植物も行っています。  例えば菊はお盆頃〜秋にかけて咲く花ですが、これも短日(夏至以降昼間の時間は日に日に減少している)状態を感じて 咲き始めます。また、桜が春に咲くのも、短日によって越冬のプログラムが働き、一端低温にさらされたあと暖かくなることで 花芽が動くように規定されるからです。小春日和に桜が咲いて「狂い咲き」などと言われることがありますが、これは桜が 「短日→低温→小春日和(暖かい)」という処理を受けたため、「春が来た」と感じて咲いてしまうために起こる出来事です。


 飼育された昆虫は人なつっこい?

 幼虫時代に飼育していると、給餌するたびに飼育ケースに手を入れ、もちろん幼虫に危害を加えないので 「慣れるのでは」と言う意見もあるようです。確かに、羽化後羽に体液が行き渡り伸びきったあとに接写しても 逃げるということはありませんでした。ただ、羽化直後は体の調子が万全ではないことから単に動きが鈍いのではないかとわたしは考えています。 ともあれ、かなりの接写ができたのでどうぞご覧ください。

キアゲハ

キアゲハ

キアゲハ

キアゲハ

モスラや、モスラ♪

キアゲハ

キアゲハ

後翅のこの色合いが美しい蝶ですね。


BACK INDEX NEXT
TOP