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希釈平板法による 生菌数計測 |
・微生物量 微生物は、条件が整えば爆発的に増えますが、その性質を利用して試料に含まれる「生きた微生物量」を可視的に確認し、微生物量(生菌数)を算出することができます。 1.試料を10倍ずつ薄める ![]() 河川の水などを使うと面白い実験になりますが*3、今回はやり方を説明するだけにとどめます。この写真のチューブの中には、ある微生物が含まれています。ただし濃度はわかりません。 ![]() この試料から滅菌ピペットを使って1ml取り出し、試験管の滅菌水(9ml)に加えます。これで試料は10倍に薄められたことになります。試料を滅菌水に加えたらタッチミキサーに当ててよく攪拌します。 充分攪拌したら、別のピペットで1ml取り出し、滅菌水に加えて攪拌します。この作業を繰り返して元の試料の10倍希釈、100倍希釈、1000倍希釈・・・・・・と10倍ずつ薄めた物を作っていきます。 ![]() 順次希釈した試料です。1本のピペットは一つの試料にしか使いません。また、まだ使用するので該当試料にピペットを指したままにしてあります。左側が一番濃く、右の方が薄い(透明度が高い)のがわかりますね。きちんと順番に並べておけば希釈倍数を間違えることはありませんが、試験管に何倍希釈かをマジックでメモしておくと良い。 2.希釈試料の塗布 ![]() 準備したプレートに希釈倍数を書き込みます。塗布後に書いてもかまいませんが、塗布する試料とプレートの希釈表示が間違わないように注意が必要です。予め書いておくことをお奨めします。また、希釈平板法では寒天培地の表面が少し乾いているほうが扱いやすいので、2〜3日前に作っておくと良い。 ピペットで試料を吸い、1枚のプレートに0.1mlずつ入れていきます。ガラスピペットで行うときは、きちんと0.1mlずつ滴下できるように練習しておく必要があります。一つの試料につき必ず3枚以上のプレートに滴下します。(後で統計処理をするときに必要になるので。) ![]() 滴下したら素早く滅菌ガラス棒で培地上の試料を伸ばしていきます。寒天の表面が乾いていると試料が寒天によくしみこむので、1カ所(滴下したところ)だけにしみこまないように素早くする必要があります。寒天を乾かしておくとこうして試料がしみこむので寒天表面に水分が流れず、培養後コロニーが独立しやすくなります。 なお、塗布するときに薄い濃度からガラス管を使うと、使用するガラス管は1本で済みます。濃い試料から始めたり、濃度順に行わないときは各濃度ごとのガラス管が必要になります。(洗い物が増えると面倒くさいですよね。) 3.計測 ![]() 試料を塗布しおわったプレートは20〜25℃のインキュベーターに入れて培養します。毎日様子を見て「これ以上はコロニー数は増えない(これ以上培養しても一つのコロニーが拡がるだけ)」という時期を判断しましょう。(あるいは実験系によっては初めから培養時間を限定する必要があります。) 濃度順にプレートを並べてみました。概ね10倍ずつ薄めたのがわかるコロニー数になっているようですね。濃い濃度のものは沢山のコロニーが出て隣同士で融合してしまい、正確にコロニー数を計測することができませんし、仮にコロニーが融合していなくても数えるのが大変になって間違いやすくなります。今回は一番薄いものと2番目に薄いものが数えるのに適しています。 ![]() 計測は、カウンターを使います。同じコロニーを重複して数えることがないように、マジックで印を付けながら数えていきます。 同じ濃度の試料を塗布したプレートが3枚以上あるはずです。ほぼ同じくらいのコロニー数になっていますか。(余裕があればF検定して分散を確かめてみましょう。) また、10倍濃いものも数えてみて、コロニー数が10倍違うかどうかも確認しましょう。もし、 「同じ濃度の試料なのに繰り返しごとにコロニー数が大幅に違う」 とか 「10倍ずつの希釈コロニー数になっていない」 ようであれば、作業のどこかに繊細さが欠けています。 タッチミキサーに当てる時間が短すぎたり、滴下後塗布するときにもたついたり、1本のピペットでいくつもの試料を吸っていたり、あるいは作業を通じて全体にコンタミさせてしまっている可能性があります。希釈平板法は非常にシンプルな原理と作業ですが、基礎的なテクニックを確認しやすいものです。きちんとできるように練習しましょう。 4.生菌数の算出 コロニー数を数え終わったら元の試料の生菌数を算出します。0.1mlを塗布していますから、そのプレートのコロニー数を10倍するとその試料1ml当たりの生菌数となります。更に希釈倍率をかけることで元の試料の1ml当たりの生菌数が出ます。(単純な算数ですね。) 表示するときは1.0×105 cfu/ml というような書き方をします。cfuとはcolony forming unit のことで、微生物数はオーダーが変わって初めて量的に違うと見なされます。 5.不二家事件 2007年初め、不二家のずさんな衛生管理が問題になりました。そんななか、次のような内容の記事も出てきました。
おそらくシュークリームを潰し、滅菌水で溶いて希釈平板法による検査を行ったとわたしは推測しています。2回薄めたとのことなので、100倍希釈ですね。そのとき細菌数が多すぎて数えられなかったという例です。 元の試料にどの程度微生物が入っているか、見当が付く場合と付かない場合があり、付かない場合は沢山希釈平板法での計測をする必要があります。試料は保存しているうちに微生物数が増えてしまうものなので、やり直しするのが不適切な場合も多いです。面倒がらずに多めにやるようにしましょう。 *1 肉エキス培地 一般的に細菌(バクテリア)の培養に使う培地で、普通寒天培地とも呼ばれる。 今回は希釈平板法の手法を示すため、培地は何でも良いというスタイルでやりましたが、「大腸菌を数える」「緑濃菌を数える」など、定量したい目的微生物がある場合は選択培地を使います。 *2 滅菌ピペット 今回わたしはガラス製ピペットを用いましたが、もちろんピペットマンなどを使ってもかまいません。その際、ピペットマンでは試験管の試料を取れないので、滅菌水を小型フラスコに用意するなどの工夫は必要になります。 *3 試料の選定 例えば、河川の複数の地点で水を採集して希釈平板法による定量をすれば、河川の上流下流で微生物数が異なるかもしれません。上流の試料にはないコロニーが下流の試料には出てきて微生物層の違いも明らかになるかもしれません。 畑の土や、公園の砂場の砂などを取ってきて水に溶き、希釈平板法を行えば、土の種類によって微生物数と種類が異なることがわかるでしょう。 |