Cinema Amo~re -MagMell-
映画感想。お薦め度は☆3が標準で多いほどお薦めになります。

AND OR

 

エリザベスタウン

ELIZABETHTOWN (2005・米)123mins.


監督:キャメロン・クロウ
脚本:キャメロン・クロウ
音楽:ナンシー・ウィルソン
出演:オーランド・ブルーム キルステン・ダンスト スーザン・サランドン アレック・ボールドウィン  ブルース・マッギル ジュディ・グリア ジェシカ・ビール 

 仕事で大失敗をして首になった夜、父親が急死したことを知らされたドリューは、母親の代理人として父親の故郷に行きます。仕事のこと、そしてそれをきっかけに恋人を失ったこと、父親を失ったこと、そんな最悪な状態でこなさなければならない葬儀のためのスケジュールやほとんど会ったことのない親族とのやりとり、そして新しい出会いを描こうとした一種の青春物。

 どの階層を狙って作った映画なのかがわかりませんが、オーリ(オーランド・ブルーム)ファンの若い女の子を対象にしたのなら相手役がキルステン・ダンストな時点でブーイングが出そうだし、あまり明るい話でもないし、しかも脚本も悪いために葛藤を抱える主人公をオーリは全く表現できず、演技力のなさが露骨に見えてしまってファンを失ってしまいそうな映画でした。
青春時代の葛藤を描こうとしたのであれば、あまりにも脚本が悪い。主演男優も下手すぎる。そのため、何も心に残ってきません。ただアメリカでも都会人からは南部の田舎の人たちのホスピタリティは鬱陶しい過干渉として認識されているらしいこと、火葬に対する感覚が日本と異なることなど、映画を通じてアメリカ文化を感じる部分があり、そう言う面では興味深いシーンが沢山ありました。また、終盤のロード・ムービー風なところでのU2の使い方は上手かったと思います。
 大人向けの青春の葛藤と新しい出会いからの再生物語を描きたかったのであれば、オープニングの「仕事での大失敗」が全くリアリティのないものだったことはかなり減点対象です。投機などが仕事の場合、たった一人の社員の成功や失敗が会社に大きな影響を与えるようですが、この映画のようなシューズメーカーの場合、たった一人のデザイナーの失敗で1000億円もの損害が出るとは考えにくい。まともにプロモーションしたり事前調査をすることで、そこそこは売れるはずだし、そこまで損害が出ない程度の試験販売を行うはず。このシューズメーカーの描き方がとてもファンタジックなので、わたしは「リアリティを求めてはいけない作品で、オーリを楽しむミーハー映画なのかな?」と思って見続けました。ところが、オーリ自身が演技力があまりないのに、暗い描写が続くのでとてもミーハー心を満足させるような画面にならない。物語の芯は実態のよくわからない父親の葬儀にまつわる混乱に移り、伊丹十三「お葬式」のような混乱をこなしていくうちに悲しみを消化していく物語を描こうとしているのかな? と思ったのですが、微妙にラブロマンスが絡むのや、うるさい子供を黙らせるための秘訣がこれまた説得力のないものだったりして監督が何をメッセージにしたいのかがわからないのです。ロマンスは、ちょっとありえないほどできすぎた女の子(キルステン・ダンスト)が現れて青年の心の再生に後押しをする、という感じなのですが、男にとって都合の良い女ではないけれど、感情移入も微妙にできない。それは、最初は彼女の方からアプローチしてきてチャンスを伺っているようなのにはぐらかす態度が多かったり、仕事のシフトが都合良く変わったり、たった数時間で完璧なマップとガイドを作り上げたり、そう、やっぱりリアリティを感じられないのです。かといってふわふわしたファンタジーでもない。落ち込んでいるときにまとわりついてくる異性がいたら、ロマンスを利用しようとするのは男女とも共通の心理だと思うので、父親の葬儀とロマンスによって青年が変化しようとする物語はありえると思うのですが。どういう作品にしたかったのか、監督(兼脚本)が絞り込めていないと思いました。
 ただし、特筆すべきはキルステン・ダンストです。彼女は日本人からは「ブサイク」と評価されることが多いのですが、演技力は確か。難しい役回りをきっちりとこなしていました。(その分オーリの下手さも目立ちます。)「スパイダーマン」ではあまりよくわかりませんでしたが、これだけの演じ方ができることに驚きました。はっきり言ってキルステンとスーザン・サランドン、アレック・ボールドウィンという無駄に豪華なキャストでなければもっと悲惨な映画になったと思います。
2005.11.19.

Last Update : 2005/11/19