1998年11月の柿のたねニュース

学校のことについてみんなで考えませんか

今年もようやく就学時健康診断の全日程が終わろうとしています。邦彦くんたちが入った頃に比べると入り口はなんとか広がったものの、入学後の受け入れ態勢はあいかわらずで障害児とその親に必要以上の努力が強いられています。子どもたちの問題が多様化する現在こそみんなで真剣に取り組んでいかなければと思うのですが、チラシを受け取ってくれたお母さん方はどう感じているのでしょうか。とても気になる所です。

柿のたねのメンバーも参加している「心身障害者センターを考える会」の副代表で、東京都知事委託身体障害者相談員をされている中村健一郎さんは鷹番小学校、わかたけ学級、光明養護学校と3つの学校に通われ、その自分自身の経験の中からやはり普通学級がいいと語ってくれました。その言葉にはとても重みを感じます。就健についてよせていただいた文章を紹介します。

「私は障害児学級『わかたけ』ができる以前、トイレ・移動、万が一のセキュリティなどの関係から保護者同伴の条件付きながら昭和36年鷹番小学校の普通学級に入学しました。50人のノーハンデの仲間と一緒に今でこそバリアフリーが当たり前になりましたが、当時は母親が付きっきりの状態でした。しかし、今思い返してみるとそれがいい経験になりました。障害者だからといって物怖じするのではなく、普通学級に通うのが望ましいと思います。

障害者と言っても一人の社会人として親亡き後も生き抜かなければならないのだから小さい時から社会性を身につけることは周囲の子どもにとっても大切なことだと思います」

(チェリー)

高尾山ハイキングに行ったよ

10月15日、高尾山へハイキングに行ったよ。

天気は上々。ハイキング日和。取りあえずの集合場所は目黒駅。遅刻魔の私を上回る金井君。「こりゃ、まだ寝てるな。起きてりゃ、携帯に連絡があるはずだから。まだまだツメが甘いな」残して出発。

高尾山口の駅で別のグループと合流。トイレで思わぬ時間を取り、登山開始。

「高尾山トンネル計画見直し」の署名を求める人達がいて、署名用紙をもらってきたので、賛同する方は島村までご連絡を。ケーブルカーか、リフトか、歩きか……。せっかくの山だから歩こうという意見もあったが、別れて登り、合流するよりは、その後の歩く行程もあるからということで登りだけリフトで行こうという事になった。紅葉にはちょっと早くて、数本の木の先が色づいているくらい。残念。あと1ヶ月後くらいが身頃かなという感じ。

リフトを降りて、みんな自分のペースで登りはじめる。ひざが弱くて階段が苦手のかおるさんも、緩い勾配の坂道になると早い早い。邦彦くんも、孝弘くんも、さっさか、さっさか。

考える事は皆同じ…山頂は人がいっぱいで、お弁当を広げている。「いま、立川にいます。」金井くんの連絡。ケーブルの上の駅近くの展望台で待ち合わせ。何しに来たのやら。

下りは山道を楽しもうというルートで降りて来たが、下りなら膝の弱いかおるさんでも大丈夫だろうと読んだのがおお間違い。結構木で作った階段やらがあって、かおるさんはマイペース。グループを2つに分けて先発部隊は先に帰ることにした。

でも、久しぶりの山(というほどきつくはないけど)は気分が生き返るね。自然とは程遠い生活をしているから、山の匂いが気持ちいい。腰の重い私としては“『柿のたね』に引かれて山登り”もいいかも……。

今回の反省。

  1. かおるさんのペースを甘く考えていた。まだまだつきあいが足りないね。
  2. もっと早くから声をかけて、人手も確保して、静男くん等にも声を掛けたかったね。

来年は私がハイキングの担当であります。もっと楽なところで、車椅子でも行きやすいところ…と、鎌倉を候補にしています。ほかの候補地があれば、ご意見お寄せ下さい。もちろん参加者大募集。

(しまむらきくえ)

JIL国際フォーラムの報告

参加者:邦彦さん、かおるさん、麗子さん、洋くん、チェリー

去る11月2日(月)〜4日(水)、全国自立生活センター協議会(JIL)主催の国際フォーラムが代々木のオリンピック記念青少年総合センターで開催され、3日(祭)の分科会に柿のたねから、邦彦、かおる、麗子、洋、チェリーの5人が参加した。

私が出席した第2分科会のテーマは「当事者提供サービスとコミュニティケア」。スピーカーは中西正司(ヒューマンケア協会代表)、立岩真也(信州大学助教授)、茨木尚子(明治学院大学助教授)、ニック・ダナガー(英国障害者組織協議会自立生活委員会議長)の四氏で、日本のスピーカーからは2000年に導入される介護保険を中心に話が進み、ダナガー氏からは英国の自立生活運動の状況とダイレクトペイメント(直接給付)についての話が紹介された。

茨木氏から介護保険は最低限の生活保障、社会的要素は含まれず医療的要素で判定され、障害者の自立には結び付かないという話があり、特に自立生活の理念と高齢者の生活支援に対する考え方の隔たり、ニーズ中心ではないサービスの状況、情報がきちんと示されていないなど説明はすっきりとして解りやすかった。

また中西氏からはホームヘルプサービスが介護保険に吸収合併される際、障害者特有の要素である登録ヘルパーやガイドヘルパー制度に替えていく、ケアマネージメントを自分でできる人は自己管理型サービス(介護保険とは別に考えるべき)、自分でできない人は障害者が介助者を雇用する(社会保険を掛ける)といった試案が示された。

立岩氏はケアマネージメントの仕組みについて語り、現状の認定方法が悪い(ケアマネージメントにかける予算など高くつく)、ケアマネージャに権限はない(シートに記入してコンピューター判定)といった点をあげ、高齢者の当事者運動がない介護保険の中身について考えていく運動を起こし、介護保険に替わる代案を出さなければならない、信頼できるアセスメント(課題分析)をどう作るか、直接給付の場合、それが正当に使用されていることをどう社会に示していくかを考えていかなければならないという提起があった。

ダナガー氏はまず、障害者は病気ではなく介助は日常生活。だから英国では医療と社会福祉は別。サービスが医療下に入ると自分で介助をコントロールできず、人権無視―プライバシー侵害につながる。障害は一人一人違い一定ではないと言う。政府は常に財政節約の意図があるが、施設では自分の生活をコントロールできず、障害者の力を奪うほどコスト高になり、介護保険もコスト高。英国の直接給付の場合、自立生活は障害者に対する投資だと主張している。自分達に財政を任せればベストの使い方を示し、1〜2年では経済効果は現れないが長期的には必ず元が取れる。それは福祉分野だけではない波及効果があり、徐々に証明されている。実際自分で介助者をコントロールする方が与えられたサービスを受けるよりはるかに医療を受けずメンタル面でも健康的。大切な観点は人権で隔離する社会は間違っている。

ケアマネジメントについては英国もかなり機能中心の評価、リラックスムードでのインタビュー形式で1時間くらいのアセスメント。介助料は事前にある程度決められていて、個人の状況を見て介助時間の総量を決め、自治体のサービス単価で金額が決まる。障害者自身がケアマネージャーになることが大切。

経済的側面でいえば障害者は税金を払いたい→働く権利がある。高度の介助を必要とする人は働けないという思い込みを変えていくため、かなり強力に運動をしないとだめ。そこで政府に対しキャンペーンをはり、障害者たちの連帯(自立生活機構)を作り上げるのに多くの障害者が参加して地方行政に働きかけ、効果は要求額の半分ではあるが自立生活機構のための予算を得て、新しいパートナーシップを作り直接給付を勝ち取り実施させた。

障害者が管理するサービス提供の内容は、直接給付の情報提供、行政へのアドバイス、コンサルタントの登録などの他、障害者をどのように雇用するかの指導や政府に対して政策提言・助言もおこなう。最初の18ヵ月でかなりのことを達成し、3年後、組織改革のためさらに多くの助成金を要求した。直接給付の良い点は、個人レベルで介助者管理ができ、団体が地方行政と契約を結ぶことができるようになったことで、地方行政はCILに対して補助を出している。

そして最後に、介護保険は権利を奪うもの、受ける側が欲していないサービス提供は不必要。自立生活こそ未来の姿、福祉予算は我々の生活、障害者は行政に対し権利と責任をもつことができると主張すべきだと結んだ。

質疑応答では、直接給付の介助費と生活費は混同されていないか、チェックする機能はあるか、個人として契約した場合トラブルの処理はどうするのか? などに対しダナガー氏は介助者は自分達に必要な存在、それを信用しないことに怒りをおぼえるが生活費が低く押さえられていればありうるだろう。直接給付は地方行政と当事者間で明確に契約している。ルール違反があった場合、以後直接給付を受けることができない→行政のサービスを受けることになる。サービス提供団体にもチェックを入れているが個人に対する方が厳しいチェックを受けることに抗議している。また介助者は多くの障害者と関わって働くより個人を好み、より誠実。給付を受けた場合個人の方が探しやすく行政のサービスを買うこともできる。介助者のトラブルがあった場合、コミュニケーションを取るための機会を作り、障害者自身が力(技術)を付けていく→介助者のネットワーク作りなどを勧めていると話す。知的障害者や金銭管理のできない障害者はどうするのかという質問に、直接給付の条文には一人もしくは介助者の助けを得て管理できる者という点があり、ここを強く主張、大切なのは家族からの独立、これは特に知的障害者からの要求が強いという事だった。

麗子さんとかおるさんは第3分科会「自立支援と関連法の整備」に参加。やはり介護保険法は実施に向けての過程にあるため一点に収束するような議論にはならなかったようで、麗子さんの報告によると当事者の事業活動として普遍性を持つかどうか、財産管理について権利侵害される側に立った法制度は出ていない、ゆえにオンブズマン制度が必要だという意見や、施設という特別な空間に「介助労働」という言葉があるが地域社会では「ボランティア」という言葉にすり替えられてしまうのはおかしい、声を大にして上げていかなければ社会福祉の構造は変わっていかない、学識経験者にまかせるのではなく我々も勉強していかねばならないという当事者の意見があって、こちらの分科会も介護保険の問題点と一定の方向性が示されて、その後ミズーリ州ののケースが紹介された。また地方の問題として長野の例を上げながら、市町村の風土の違いや地方行政は福祉という大枠でくくられているだけという福祉政策の地域格差について話があったようだ。

介護保険はやはり問題点が多く障害者の自立と結びつかないということは見えてきたが、批判だけでなく、いかに当事者の声を上げ代案として示していくか、当たり前の権利保障を確立していくためのアクションをおこしていかなければと改めて感じた。

(チェリー)

最後にダナガー氏が提起した以下の決議文を全体で承認して閉会した。

  1. 自立生活は障害者の社会・経済への投資である。
  2. 社会への完全参加は基本的人権にかかわる問題である。
  3. 介護保険は時分の生活をコントロールする権利を奪うものであり、効果的な方策でもない。(ドイツを見るとよい)
  4. 障害者は社会的な活動及び雇用に関して充分なサポートを得る権利がある。
  5. 介護保険の運営管理にかかわる多大なコストは、障害者の自己管理によってより効果的に利用できる。