2003年10月の柿のたねニュース

障害児の親の会の報告
就学時健康診断って何?

2学期に入って初めての「障害児の親の会」を9月28日の午後、鷹番住区センターでおこないました。いつものように個別の現状報告をしてそれぞれの話を聞くことで情報交換をしたり、なにより孤立してしまいがちな親同士の関係が集いの場を持つことで励ましあい前進していくパワーにつながるのではないかと思います。土日はどうしてもいろんな行事と重なってしまうので、次回以降は平日の日中に集まろうということになりました。以前なら、平日は学校の付き添いでかえって出席できないということが多かったのですが、最近は親以外の介助者がついたり、付き添いそのものを外れたりするケースも出てきました。各々の努力の結果、少しづつではあるけれど、学校での受入についても変化の兆しは見え始めていますが、やはり基本は振り分けによる分離教育が根底にあり、それを変えない限り同じことの繰り返しだという事をあらためて感じます。また親の会でも話題に上がった東京都心身障害教育改善検討委員会の答申は当初秋に出る予定でしたが、先送りとなり12月を目途に出されるということなので、答申が出たところであらためて報告します。

そして、分離教育の象徴ともいえる就学時健康診断が今年も11月、区内全ての小学校で実施されます。就学時健康診断とは、子どもたちが小学校に上がる前に身体検査や知能テスト、学校長との面接等によって、障害を持った子どもを見つけ出すためにおこなわれています。その後、就学相談という名目で親を説得し、就学指導委員会で判定を下します。就学指導委員会は医師、学者、校長、教論、教育委員会の職員などで組織された機関です。そこでおこなわれる面談では保護者(大抵の場合母親一人)に対し、上記の専門家たちが居並び、この子に合った教育という話が勧められます。目黒区では最終的に親が普通学級を希望する場合それを尊重して受け入れることになっていますが、ここで問題となるのは、就学指導委員会で一度普通学級不適応の判定が下されてしまうと、自分の地域の普通学級に通う場合でも、親の付き添いを前提とされてしまうことです。

つまり、本当は障害児学級に行くべきなのに親のエゴで普通級に通わせるのだから、自分で責任を持って面倒をみなさいと暗に言っているのです。そして実際に普通学級へ通う子どもの親たちは付き添いをはずす事に膨大な時間とエネルギーを費やされることになります。この通信で何度も書いているように、子どもたちは毎日を一緒に過ごすことでお互いの存在を確かめ合い、認め合いながら成長していきます。授業の中だけでのボランティアでいったい何がつかめるのでしょうか?学校時代を別々に過し、社会へ出たらノーマライゼーションです、いっしょに生きていきましょうという言葉に、どれだけ説得力があるでしょうか?

柿のたねでは少しでも多くの同年代の親の方にこの現実を知っていただくために、毎年校門前でチラシを渡しています。そのチラシを見て柿のたねへ相談される方も多数いますが、就学時健康診断の実施日は各学校毎にまちまちなので、同じ日に4〜5校でおこなわれることもあります。ぜひご理解の上ご賛同ご協力をお願いいたします。

(櫻原)

ご存知ですか? 協働区民フォーラム

目黒区の協働区民フォーラム、ご存知でしょうか?目黒区報の7/23臨時号で協働区民フォーラムの特集を掲載したので、ご覧になった方も多いと思われます。「えっ、それな〜に?」という方のためにここで紹介したいと思います。

「協働区民フォーラム」ってなに?

これまでの目黒区における住民参加は、行政が出した案に対して意見を述べるという形がほとんどで、直接意見を言える諮問機関のような場合でも委員の数は限られていました。これに対し昨年4月に区から提案された「協働区民フォーラム」の設置は、これまでの仕組みを変えて区民自身が意見を出し合い、自分たちが生活する街作りのための提言をこれまでとは逆に区民の側から行政におこなうというものです。

昨年の呼掛けに集まった区民、つまり準備会のメンバーがこれまでの期間、どのようにすれば区民が主体的に検討し提言をまとめることができるかという基本の部分の議論を重ねてきました。

そして、この9月7日(日)に目黒区総合庁舎でおこなわれた発足式第1回全体会がスタートしたのです。これは行政側からだけでなく準備会のメンバー、区民の側からも呼び掛けられ、行政と「協働区民フォーラム」の間に相互の連携や協力、お互いに対等であるというパートナーシップ協定が結ばれました。

「協働区民フォーラム」で何をするの?

参加者は区内の在住・在勤・在学・在活、つまり自分の意思で希望すれば誰でも参加することができます。これまでのような人数制限もありません。そこで話し合われ、検討した結果は概ね1年を目途にまとめ区長に提言をおこないます。それを受けて区が方針安を策定するまでの間が「協働区民フォーラム」の設置期間となります。

具体的にどのような形で議論するの?

現在様々な視点から検討するために「協働区民フォーラム」は関係・ひと・もの・かね・情報という5つの分科会をおいています。参加者はそれぞれ、現時点での自分のテーマに合った分科会に参加し、そこで自由に意見を出し合い議論していきます。そして2ヶ月に1度全体会を開き、各分科会で話し合われた内容について全体で確認作業をおこないます。

やっぱりルールは必要

いろんなひとが集まってお互いに意見を述べ合うのだから、やはりルールは必要です。でもそんなに難しいことではなく、

  1. 一人よがりにならず区民全体の視点・関心を念頭に入れ
  2. 徹底的に議論し自由な発言を尊重する
  3. 言いっぱなしではなく参加者が発言に責任を持ち
  4. 合意のための議論を心掛けて決まった事については尊重し
  5. 具体的で実行性のある提言を作成する

というだけのものです。

より多くの声が新たなものを生み出す

誰でも参加できるということは、より多くの人が集まり議論することでとても大きな力となっていきます。せっかく自分の意見を言える機会があるのだから、ぜひともいかしていい物をつくりたい。ステキな街作りを目指していきたいですよね。

私はこれまでの柿のたねの活動から、ひと分科会に参加しています。ぜひみなさんもそれぞれの思いをもって参加して下さい。

(櫻原)
「協働区民フォーラム」問い合わせ先
事務局:協働推進会議室 TEL 03-3719-0795

〜絆〜 ゴウちゃんの成長とともに―

9月2日(火)夏休みあけ、久しぶりにゴウちゃんに会う。私が学校に着くと、ゴウちゃんはもう階段を上り始めていた。ゴウちゃんママに代わり介助に入る。ゴウちゃんは、両手で手すりにつかまり、半歩づつ横に足を動かしながらゆっくり上る。腕の力で体を支えているので結構きつそうだ。手を離したり、踏み外したりしたらとても危険なので介助も緊張するところだ。それにしても、一人で階段の上り下りができるようになるなんて、以前には考えられなかった。「ねえ、新井さん、ボク、学校の給食室にマックに来てもらいたいんです。それでテリヤキとポテトと…」今日も舌好調らしい。「♪フン〜♪フン〜」そして、鼻歌まじりに階段を上る。いつもながらゴウちゃんの歌声は美しく、高い音まで良くのびる。音程もかなりしっかりしている。さて、いつもなら途中で休憩したり、話に夢中になって遅くなるのに、なんだか今日は速い。感心しているうちに、いつもの2〜3倍の速さで2階まで上ってしまった。ここからウォーカーを使用して、3年1組の教室まで行く。いつもなら、ウォーカーで移動する時も、気の向くまま寄り道をしては立ち止まるので、なかなか進まない。出も、今日は違う。速い。あっという間に教室に到着。私の知る限りでは新記録だ。ウォーカーを廊下に置き、ゴウちゃんの体を支えながら席まで移動する。席替えがあったらしく、廊下側から3列目の一番前が、ゴウちゃんの新しい席。机の上にゴウちゃんママが鞄から出しておいてくれた教科書とノーと一式がある。これを机の中の道具箱にしまう。テーブルを少し前に出してあげると、自分で道具箱を手前に引き寄せ、空いた隙間から一冊づつしまっていく。ここまでで、始業前の準備は完了。最近、介助者は廊下待機となったので、廊下の椅子に腰掛けて中の様子をうかがうことにする。ゴウちゃんは、時々後を向いて、私がいることを確認しては「ニヤリ」と笑う。もうすぐ先生がいらして朝の会が始まる。今日の登校から始業までの様子はこんな感じだった。

ゴウちゃんは、マイペースながらも着実に成長している。私の介助ペースはだいたい月に1〜2回程だが、前回、介助に入った時はできなかったのに…と、驚くことがよくある。例えば、嫌いで飲めなかった牛乳が飲めるようになっていたり、給食のランチョンマットをたたんでしまえるようになっていたり、通学鞄の止め具の開け閉めができるようになっていたりと。そして、できるようになったことは、次からは自分でやり遂げようとする。国語の教科書の文章を覚えてすらすら言えたり、九九の覚え初めは一つ二つ言えた位だったのに、とうとう全部マスターしていたり、ひらがなが全部読めるようになっていたり、挙げればきりがない。今日の階段歩行にしても、こんなに速く、そして危なげなく上れるようになっていたのもまた、うれしい驚きであった。一方、悪知恵も働くようにもなってしまい、口八丁お調子よく言い訳したり、「トイレ〜トイレに行きたい〜」この演技に何度だまされたことか…困ったことだ。でも、実はそんな成長ぶり?までも、ちょっと感心している。

縁あってゴウちゃんの介助に携わることとなり3年目。初めの頃は、いったい私にどこまでできるのかとても不安だった。でもやってみれば何とかなるものだ。介助に関してはまだまだ未熟者だし、まして、なにかを指導するところまでは、とても至らない。でも、ゴウちゃんの成長は、しっかり認めてあげたいと思っている。次に会うのは15日。また新たな喜びを見つけられますように。

(マナの会 新井弘美)