2003年9月の柿のたねニュース

17周年報告&成年後見制度講演会
感謝の17年、そして20年目を目指して!

今年の17周年行事は8月31日(日)の午後、鷹番住区センターにおいて開催いたしました。ちょうど17年前、曜日も同じく日曜日、柿のたねを設立した記念日です(孝広さんが断言しているので確かだと思います)。

設立以来、障害者と健常者がいっしょに地域で生きていくための出会いの場として、また誰もが自由に出入りできる溜まり場として活動を続け、早や18年目に入りました。

これまで、リサイクル事業とみなさんからのカンパという公的助成金に依存しない自主財源で任意の民間団体としてやってきましたが、財政的には厳しい状況が続いています。そこでもう一度活動を見直し、NPO法人取得も視野に入れた組織基盤の整理をおこない、溜まり場としての位置付けの再確認、障害者が地域で生きていくための自立支援、障害児の学校内での付き添い介助を進め、地域交流の場としても定着している市やバザーなどのリサイクル事業の立て直しを計っていきたいと考えています。そのためにはヘルパー派遣や各種講座の立案開催などマンパワーを活かすための事業を新たに立ち上げていくことも今後具体的な検討課題としていく必要があります。

将来的にはこれまでの溜まり場や各種相談、緊急時のサポートや行政との交渉など個々のテーマに応じた活動を継続し、発展させていくために、柿のたねが地域活動支援センター的な役割を担っていけたらいいと思っています。

柿のたねはこれまでも多くのみなさんに支えられて活動を続けてきました。現状は少々停滞ぎみですが、逆にそれをバネとし、力を結集してマジカルハウスの名にふさわしいものを作っていきたいと思います。

柿のたねはあと3年後に20周年を迎えることとなります。設立時に蒔いた一粒のたねが一本の成木として実を結ぶためにも、今後ともみなさんのご理解とご協力を是非ともお願いしたいと思います。

そして、今回の講演は「成年後見制度」。

神奈川県社会福祉士会理事で、成年後見権利擁護事業部「ぱあとなあ神奈川」に所属されている古畑英雄さんにお越し頂き、お話を伺いました。すでに自立生活をスタートしている邦彦さんや今後始めようとする孝広さんや優子さん、また多くの障害者やその家族にとって切実かつ現実的なテーマです。私も漠然と理解をしていたのですが、古畑さんの丁寧で具体的な例を挙げた解かりやすい説明で、制度の抱える問題点や障害者が置かれている現状の厳しさをあらためて再認識することができました。例えば成年後見制度は当事者の法的権利を保障するものではあるけれど同時に公民権を失効する点、また後見人は意思決定には関与できず、支援者としての立場とは一線を隔し、一方でまだ家族後見が多くを占めているなど、私たちが求めてきた本人の自己決定、親の庇護からの自立ということからは掛け離れている部分があります。

現状の制度をうまく利用しながらも、改善していかなければいけない一面、なによりあらためてともに地域で生きることの意味を問い直される思いでした。

(櫻原)

八さん、熊さんのとんでもないぜい!
目黒区の住基ネット第二次稼動

八さん:この前新聞に出てたけど、目黒区は区民37人の住基ネット停止の申立に対し、ノーと言ったんだって。

熊さん:そうなんだ。去年の8月5日から住民基本台帳ネットワークシステム(略して住基ネット)が、一部を除いて全国一斉に始められたよね。今年の8月25日からは、本格稼動といって、住民票コード付きのカードの発行が始まったところなんだけど、反対する区民も多く、「中止請求」や「異議申立」などがおこなわれていたんだ。

八:目黒区個人情報保護審査会というところが、この申立をを認めたんでしょ。

熊:そういうことだね。目黒区長はこの審査会に、区民の申立は妥当でしょうかという伺い(諮問)をしていたところ、審査会は申立を認めろと言った、ところが区長は自分で諮問をしておきながら、反対の答えを出したんだ。諮問をないがしろにするというのも、ひどいよね。

八:審査会と反対の結論を出していいの。

熊:これまでの目黒区の答申制度ではなかったことだ。審査会が言っていることをかいつまんで言うと、住基ネットを定めた法律は、住民が自己情報をいつどこでどのように使用するか、またそれを自分で決めることができる権利を明記しておらず、憲法に沿ってプライバシー権を保護するという点では、目黒区が住民個々に対して、住基ネットにつながないで欲しいという権利を保障することが必要だといっている。

八:平たく言うとどういうこと?

熊:目黒区も市民選択制を採ったらどうなのという答申だね。内容的にはプライバシー権が保障できていない法律より、憲法を優先すべしという、当たり前といえば当たり前だけど、格調高いよね。

八:市民選択制というのは横浜方式って言うあれ?

熊:その前に、今現在住基ネットの送信をおこなっていない自治体は、全国で国立市、杉並区、矢祭町の3つ。杉並区は選択方式に移る予定なので今のところはっきりと離脱を続けると表明しているのは2つという事になる。国分寺市や中野区、一部小金井市もその仲間だったんだけどね。まずは住基ネット離脱という方法がある。次に市民選択方式についてはどうか。参加したい人が手を挙げるのがオプトイン、参加したくない人が手を挙げるのがオプトアウト方式と呼ばれる。何が言いたいかというと、横浜方式のようなオプトアウト方式はダメということ。

八:どういうこと?

熊:横浜方式は、最終的には全員参加させるための緊急避難の処置とされ、国も認めている。本来ならサービスを受けたい人が手を挙げるべきなのに、参加したくない人の方が申し出るようになっていてしかも、不参加者にはマーキングがされている。参加したい人だけの情報を送るという選択方式が最低限だね。

八:これからどうなるの?

熊:区長は議会答弁などで、区民のプライバシー保護には万全を処したいと、寝言のようなことを言っている。しかし現実には法律で禁止していても銀行協会のように民間利用がされたり、国の同じ官庁内で回覧されリストが作られたり、問題になってからでは遅い!プライバシー保護の体制を作らせる事が一つ。そして、今回の審査会の意見も武器にして、本来の住民選択制求めていく事が当面の目標かな。

八:杉並区ではアンケートを採って、その結果もまだ67%の人たちが離脱を続けるべきだという結果になったんでしょう。

熊:そうだね。目黒区も住民アンケートを採って、きちんと民意を知るべきだね。そしていくいくは住基ネットが廃止される事ができるといいね。

(史子)

〜絆の続き〜 親から見える風景

現在小3の“ゴウちゃん”は脳性麻痺で運動機能障害があり車椅子を使用し、普通級に通っています。学校内ではウォーカーと呼ばれる歩行機で廊下を移動し、教室では、少し細工をした椅子に座って授業を受けています。トイレのことや、階段、そして体育の授業などに安全面を考え、介助の方の手を必要とし、学校生活を送っています。その我が子、豪太の学校介助をして下さっている方々のグループを「マナの会」といい、前回登場の羽山さんが、代表をして下さっています。

約2年半前の2月。幼稚園のお友達の多くと同じ学校に通いたいものの、就学指導委員会では「わかたけ学級(身体障害児学級)」と言われて、途方に暮れていた私に、羽山さんは「ゴウちゃん、学校どうした?」と声をかけて下さいました。「鷹番小に無理だと言われちゃった」と愚痴のつもりの私の一言が、怒涛の2ヶ月、そして現在に至るまでの「マナの会」の皆さんと豪太、そして我が一家との絆の始まりになりました。

署名を集め、区の文教委員会の議題になるような時にも、羽山さんは全てをとりまとめ、また、何度も一緒に学校や教育委員会に行ってくれて、涙し、ある時は夜の10時まで話し合いをしてくださったこともありました。やがて学校が許可すれば入学を認めるという事になった時、校長先生に対して、「豪太くんを支援する私達、自らが介助に入ることを条件としてなら就学可能になるのではと考え…」と直に申し入れまでして下さいました。それから急転直下、色々と条件はついたものの、入学が許可になりました。そして私を含め協力して下さるお母様11名が学校に呼ばれ、きちんと入学を許可する旨の説明と、介助者としての諸注意を受けたのは、4月1日の雪の降る午後でした。

この原稿を書くにあたり当時の記録を見ていると大量のFAXでのやりとりをしたものが出てきました。たくさんの事務事項の最後に必ず、羽山さんは“前進!”とか“ひとりじゃできないけれど力を合わせて”とか“まだまだ諦めない”等と、毎回毎回励ましの言葉が添えてあります。甘えていて本当に申し訳ないと思うけれど、素敵な出会いができたことの方を“幸せ”と思いたいです。

今は同性介助を増やしていきたいと、外部のグループから来て頂いているお兄さんを含め、12〜13人の方が、介助に入って下さっています。本当に幸せ者の豪太です。ただ、教育の場でありながらバリアフリーの進んでいない学校、授業としてだけのボランティアなど、学校に対して思うことはたくさんあります。誰もが、学校と手を携えて、平等に教育を受けられる日は来るのでしょうか。

♪こんなに小さな僕らでも、みんなで力を合わせればー、できないことはないはずさー、ないはずさー♪という歌は、密かに「マナの会」のテーマソングなのです。

(渡辺 夏恵子)

渡辺さんの言うようにバリアフリーとは程遠い現実や、学校によってはまだまだ受入を拒否したり、事ある毎に転級を迫ったりするケースはたくさんあります。なにより教員が障害児にどう接したらいいかわからないという、これまでの分離教育のツケを当事者が一方的に負わされている状態です。そんな中でお互いに支えあう関係があるというのはとても心強いと思います。次回は「マナの会」の他のメンバーからの声をお届けします。

(S)