2003年5月の柿のたねニュース

秩父SLの旅、寂しかったけどなかなかよかったよ!

今年の春のイベント。潮干狩り→バーベキュー、二転三転してやっと決まったSLツワー。担当も本来私がやるはずではなかったけれど、何も企画せずポシャルのは納得がいかず引きうけた次第で、それでも子どもたちが楽しんでくれたらなぁ、なんて思いながらばたばたと予定を組んでいく。

念のため雨天中止にして、雨男の本領発揮かと思いきや、しっかりと雨を避けての決行。直前まで参加メンバーが決まらないような状況でした。

いざ当日。春先からこの企画を楽しみにしていた孝広くん(個人的に行こうという話があったけれど実現せず)、邦彦さん、私、洋志くん、渡辺さん、寺山くんの6名でいざ出発。その他3名は早朝出発のためおしくも断念。

西武池袋線から直通電車で浦山口に到着。何年か前に一度行ったあやふやな記憶を頼りに陸橋が見える河原を探すも、やはりそこはいいかげんな私、わからず秩父のエキスパート田中さんに携帯電話でSOS!そうこうしているうちになんとか河原に辿りつく。 とりあえず、コンビニで買った惣菜その他をつまみにみんなで乾杯。(なんとお弁当を持ってきたのは邦彦さんただ一人、前日の介助者吉田くんの心のこもったオニギリをいただきました。)

さて、いよいよSLの陸橋通過!メインイベントはあっけないほどに過ぎていきました。その後三峰口まで行き、帰りはSLパレオに乗車!おぉ目の前に本物の煙を吐くSLが!ちょっと感動!う〜ん、子どもたちに見せてあげたかったなぁ、その勇姿!

窓から見える景色は最高。さっきまで遊んでいた河原の陸橋を通過する時は、お約束のお手振り!(バーベキューグループが手を振り返してくれました)

えっ、チェリーはずっと寝てたじゃないかって?だって2時就寝の5時起きっすよ!四十路を迎えようとする私には辛いっす。

そんな中孝広くんは本当に満喫してました。鉄道フリークの孝広くんとしては、1日で西武池袋線、秩父鉄道、東武東上線と3路線制覇。楽しくないはずがない。1日ずっと上機嫌でした。

確かに帰宅後はぐったりしてしまったけれど、でもなかなかよかったよ!

次は埋め合わせ企画じゃなくて、本格的にやってもいいかなと思う感動はありました。でも、できたら一参加者のお気軽気分がいいかな?

(チェリー)

親の会報告、そして鷹番小運動会!やっぱり?…

新学期が始まって第1回目の普通学級に通う障害児の親の会を5月24日(土)の午後、柿のたね近くの喫茶店で個室を借りて行いました。春先は運動会のシーズンで、日程を調整しましたが、どうしてもどこかに重なってしまう、そんな中やむなく決まった日程でした。

参加者から現状報告があり、学校によって、また担任や校長によってまったく異なる個別への対応に、戸惑いとともに憤りを感じてしまいます。今回は新入学のケースも含めて、担任が変わることでの状況の変化というのが話題の中心になりました。あらためて学校側と話し合いの場を持ち、こちら側が予想していた以上に好転しそうなケースもありますが、障害を持つ子どもたちにとって環境の変化というのは周りが考える以上に大きな問題で、毎年その度に本人や家族が辛い思いをしなければならないというのはどう考えても間尺に合いません。やはり制度そのものを変え、教職員に対する研修等の必要性を痛感させられました。

子どもたちが通う学校の環境を少しでもよくしていきたい、その全てを学校に押しつけるつもりはありませんが、現状の中でさえまだいくらでも改善の余地があるであろうと思われるのに、障害児は本来この学校に来るべきではないのだから、それは親の側で何とかすべきだという態度は昔も今もあまり変わってはいません。

でも親の会を始めるようになって思うのは、情報交換をしたり、愚痴や不満を吐き出したりする中で、みんな少しづつたくましくなってきたなという思いです。個々が孤立してしまうとどうしてもネガティブになってしまうけど、みんなの力を寄せ合えば、お互い支え合うことはできる。まだまだ現実は厳しい状況ですが、少しでもこの輪を広げて、みんなで声を大きくしていきながら、これからも教育現場を少しでも変えていきたいと思います。

ところで、今回日程調整をする中で以前から頼まれていた豪太くんの運動会の付き添い介助。なにせ私と豪太くんがタッグを組むと史上最強の雨乞い師と化してしまう二人なのですが、今回もみなさんの期待?に違わず当日はしっかりと雨。順延された翌日も開催が危ぶまれるほどでした。(関係者のみなさん、本当にごめんなさい!)

それでもなんとか実施された運動会。周囲の期待はメインイベントの80m走!最後の10mをウォーカーを使って走る予定なのですが、直前までまったくやる気を見せず、しきりに家族や知合いを探してばかり。とにかく顔見知りを見つけては歓声を上げるハイテンションぶり。

さていよいよその時がやってきました。スタートの合図とともに、それまでのやる気のなさが嘘のように猛ダッシュをする豪太くん。おいおい、この勢いだと一位か?マジか!今までの態度はこの時のための演技だったのか?!…

すると、みるみる斜行してコースを外れていく豪太。おい、どこに行くんだよ、そっちじゃないだろ!ふと見ると彼の行く先にはお友達のお父さんがカメラを回している。満面の笑みで語り掛ける豪太。その間に次々と子どもたちが通過していく…。えっ、うそ!まじで!あのまま走っていれば1等賞じゃねーかよ〜!

その後、周りの思いなどまったく意に介さず、満足下にゴールに到達した豪太くん。

クソー最大の不覚!人参ぶら下げる位置を間違えた!ゴールテープの後ろからビデオを回していれば間違いなく勝ってたのに…

いや、まったく天下一のお調子者で、何とも愛すべき豪太くんの新たなエピソードに遭遇できた感動は一生忘れられません。だって本当に絵に描いたように期待通り(渡辺さん、ほんとうにごめんなさい!)の展開なんだもん。

いやぁ、これから毎年、全ての予定を空けて運動会の付き添い介助に立候補したい!来年こそは作戦を綿密に練ってゴールテープを切るぞ。頑張ろうぜ!豪太。

(櫻原)

福田孝広さんの自立生活に向けて!〜いよいよ体験スタート〜

毎日、朝のオフィス清掃の仕事に柿のたねのお手伝い、夕刊配達と仕事に勤しむ、孝広さん。

10年ほど前、高校を卒業してしばらくしてから、突然就職を決意!翌日から毎日柿のたねに通い始め、苦手だった食生活の改善もクリアして、一歩一歩着実に歩んできました。夕刊配達の仕事も清掃の仕事も、最初の頃はいろいろとトラブルもあったけれど、このところはとてもがんばって安定しています。

無着さんが自立生活を始めてから、よく柿の木ハウスに遊びに来ては、介助者ノートを熟読し、ネタを仕入れては「無着くんの○○が△△したら〜」などと茶々を入れ、私に叱られたりもしたけど、いざ自分の話になると興味なさそうにしていました。

そんな孝広さんが初めて自立生活を意識し始めたのは、金井くんと二人で出掛けた札幌のピープルファースト大会の頃からでしょうか?同世代、同じような環境の仲間達の話を聞いて刺激を受けたのか、その頃孝広さんからでる話題はそれにまつわるものばかりでした。考えてみると柿のたねのイベントでみんなで出掛けることはこれまでもあったけれど、孝広さんが主役で泊りがけの旅行にいくのは初めてだったかもしれません。

それならと自立生活に向けて動き出そうと水を向けてみると、タイミングが悪かったのか、なかなかスムーズに事が運ばず、本人も気持ちが引いてしまい、口にはするけれど、具体的な話になると先延ばしにすることが多くなりました。

去年初めて一人で泊りがけで出掛けた、たこの木クラブでの体験。11月には再びピープルファーストの熊本大会に参加し、あらためて感化され、周りの包囲網にも後押しされ、少しづつ具体化し始めた自立生活への道。

今年に入って孝広さんは不安にかられながらも、柿の木ハウスで自立生活体験を始めることになりました。第1段は孝広さん31歳の誕生日の翌日からスキー旅行までの1週間。この時はまだ初めてのことだし、周りも優しく対応してくれました。

そして、第2段は4月のバザー後1週間。孝広さん自身で目標を立てて臨みましたが、周りも今度は手厳しくその言動にチェックが入ります。

特に大きかったのは、これまでの関係の中で、「これこれ」とか単語だけでの会話で成立してしまってきたコミュニケーションの部分を矯正すること。私たちもきちんと整理せず済ませてきてしまい、孝広さん自身もこれまでそれで通ってきていたので、なかなか難しい課題になっています。

具体的なアプローチとして、電話での応対を練習したり、誰かに伝言をきちんと伝えたりと様々試みていますが、なかなかうまくいかず本人も周囲も四苦八苦している現状です。

今月末には第三段として、あいアイ館での自立生活体験を計画しています。これまでの人間関係とまったく異質(新た)な関係の中で、多分うまく意志が伝わらないもどかしさを孝広さん自身が感じながら、どうすれば自分の思いを相手に伝えることができるかといったことが課題になってくると思います。

あんまり厳しいことばかりだと、自立生活の夢も希望もなくなってしまったらイヤだよねと言いながら、それでも厳しい鬼教官たち。子どもの頃から知っているだけに自然ときつくなってしまうけれど、それでも自分に向き合ってくれるという姿勢は孝広くんにとってもまんざらでもなさそうで、ここはお互い試練の時期ではあるけれど、なんとか乗り越えていきたいと思います。

孝広さんにとっても人間関係の世界を広げていきながら、よき理解者を作っていくために、もっともっと関わってくれる方を現在募集中です。お互い生活の一部を共有しながらみんなでいっしょに生きていけたらいいな、その輪がどんどん広がっていけば、あの子もこの子も私もあなたも、みんなで楽しく生きていけるかもしれません。

ぜひぜひご協力をお願いいたします。

(櫻原)