2003年1月の柿のたねニュース

知的障害者のためのガイドヘルパー養成講座第5回

ガイドヘルパー養成講座もいよいよ実践研修とまとめを残すのみとなりました。こちらの予想をはるかに越える参加者に、当初予定していた1日では全員の分をこなす事ができず、急遽3回にわけて、おこなう事になりました。

その第1回目は12月22日(日)、目黒区手をつなぐ親の会・NPO法人たんぽぽの会主催のクリスマス会に参加させていただく形で、1時から4時まで上目黒住区センターレクレーションホールでおこないました。100名は超えるのではないかというパーティーで催し物も盛り沢山、とても賑わっていました。講座の受講者の方には、当事者に付き添っていっしょに楽しんでいただく事になりました。どこかへ出掛ける訳ではありませんが、その場で初めて会った当事者の方に付いていただくということで、お互いに多少緊張気味だったかもしれません。これまでの講座内容を考えながら、初めての実践はどうだったでしょうか。

一緒に参加していた孝広くんは、クイズに答えたりお土産をいただいたりとかなり楽しんでいたようです。私たちも柿のたねを作る前に、地域の子ども会の活動を続けていましたので、なんだかなつかしい気分に浸りながら、でもこんな大規模なクリスマス会ではなかったな、毎年この規模でやるのはすごいなと感じていました。お世話になった倉橋さんをはじめ関係者の方々にはほんとうに感謝しております。どうもありがとうございました。

第2回目は1月25日(土)、この回は当初の定日で、内容としては当事者の方と一緒に渋谷へお買い物に出掛けるというのがテーマです。その意味では3回の中で一番ガイドヘルパーの意味合いが濃いのですが、結果的には一番参加者が少ない日ということになってしまいました。やはり受講者のみなさんは初めての方が多いので、当事者と二人での外出という内容にちょっと引いてしまわれたのでしょうか?第2回、第3回はこれからおこないますので、報告は次回にしたいと思います。

第3回目は2月2日(日)、こちらもイベントの付き添い参加という形でおこないます。内容は柿のたね恒例のお餅つき会。いつもは30人くらいの規模なのですが、今回はその倍くらいになりそうで、相当賑やかな1日となりそうです。ただ当日は基本的に屋外イベントなので、天気だけが心配。何と言っても私自身筋金入りの雨男なので、それだけは勘弁してと今から祈るような気持ちでいます。

この実践研修を通して、どのような感想がでてくるでしょうか。中には当事者の方たちと初めて付き合うという方もいらっしゃるでしょう。頭で考えていたようにはいかなかったとか、失敗してしまったということもあるかもしれません。けれど講座の中でも繰り返し話されてきましたが、経験を重ねて慣れていくのが一番の近道なのだと思います。そのあたりの話とみなさんの感想を中心としながら第6回講座のまとめで活発な意見交換ができたらいいなと思います。

(櫻原)

散歩しながらの楽しいひと時

(12月22日から1月4日まで、恭子は自宅に帰ってきました。その時の記憶です)

大円寺は、二人の足で自宅から30分ぐらいのところにあります。

「今日は、お地蔵さんのところへ行ってみようよ」

「どっちのお地蔵さんが好きかな」

「きょこちゃんが、きょこちゃんの」と、恭子はもうすっかりおしゃべりです。

西五反田の自宅から目黒川沿いに、すっかり葉を落とし、芽の硬そうな桜並木を、中目黒の方角に歩いていくと、やがて太鼓橋に到着します。

ジャンパーのポケットの中で手をつなぎ、時々出会う散歩の犬に一寸気を使って、「ほえないでね」とか「鳩さんどうしたのかな」とか「お魚が見えるかな」とか、でも恭子のほうが遙かに多弁です。

ひっきりなしに「どうしたの」、「きょこちゃんの」を連発し、返事に窮していると、「お父さん」と避難するような大きな声で催促されます。

何を見て「どうしたの」と聞いているのか、なかなか特定できませんが、とにかく即答しないといけません。

「お地蔵さんは、あかちゃんです。6人もいます」、私が話している間は、黙って聞いているように思えます。

ときどき、「恭子ちゃん、何のこと」と聞いてしまうと、「どうしたの」で返されてしまいます。

声に張りがあってよくとおり声ですから、すれ違いに振り返る人も多いし、驚いたような素振りをする人もおって、さまざまです。 太鼓橋から右折して老舗のうなぎ店を見ながら、雅叙園へ向かいます。

入り口の紅葉は、12月も末だというのに、未だ健在です。

「行人坂」の急坂を一寸登ると、右手に目指す大円寺が見えてきます。

この急坂はかなりの強敵です。

ポケットから手を出して、「いっちにいっちに」と声を出して、息の具合に注意をしながらの上り坂です。二度ほど立ち止まり、息の静まるのをまって、やっと到着です。

荒い息をしながら、大きな声で笑い続けます。

「いっちにいっちに」と言いながら一緒に手を大きく振ると、声も顔も大喜びです。

六体の真新しいお地蔵さんの前で、二人で座り込んでしまいました。

地べたにお尻をつけて、足を投げ出し、いつものスタイルです。

一緒に座ってながめていると、お地蔵さんは、機嫌のいいあかちゃんのようです。

こんなに近くで、しかもゆっくりと、お地蔵さんをしみじみと見たのは初めてであったし、思わず見比べてしまいました。

「どっちのお地蔵さんが好きかな」という質問は、全くの愚問であったわけです。

暮れから正月休みの期間中、お天気にも恵まれたため、大好きな散歩を楽しむことができました。

今年は自宅の周りのお寺や沢山の庚申塚や路地裏など、二人だけの秘密の場所でしたが、かなりの健脚ぶりに安心しましたし、おしゃべりの恭子をあらためて実感できました。また、私自身も、見落としてきたものを一緒に楽しめたのかなと思っております。

次の機会には、また同じところも再訪してみたい。今から楽しみです。

(最後になりましたが、恭子お泊り会の皆様には、このたびも、恭子のお風呂や食事やらのお手伝いにお出かけをいただきました。皆様方とご一緒に、にぎやかな食事をしているときの表情は、とても幸せそうでした。本当にありがとうございました)

(齋藤豊)

八王子福祉園から年末年始に帰省していた恭子ちゃん。おとうさんのほころんだ顔が目に浮かんできます。

(編集部)