2002年9月の柿のたねニュース

16周年&支援費制度後援会報告
地域で生活するために・柿のたね今後の課題

早いもので、柿のたねも17年目を迎えることとなりました。毎年8月の最終週に報告会ならびに講演会をおこなってきましたが、今年はくしくも設立日と重なり、去る8月31日(土)、上目黒住区センターレクレーションホールにおいて16周年報告会と支援費制度についての講演会を開催しました。

ここ数年来、柿のたねは厳しい状況が続いています。財政的には不況のあおりを受け、リサイクル部門の著しい減収があげられます。毎月第3日曜の「市」だけでなく、春秋におこなう公会堂バザーも以前のような売上は望めず、全体的に低落傾向にあります。活動するスタッフも毎年年齢を重ねていきます。

そこで、昨年度はその解決のために外へ広げていく取組み、学習会の定期化、職員体制の充実を三つの柱として活動してきました。その中で、

東京マイコープの助成金を受け、10月から平日の午後職員の二人体制を取ることができました。

その結果として、これまで週一のガレージセールを火〜金に増やし、自主財源の増収を計り、「市」の売上をしのぐほどになりました。また二人体制になったことで、教育相談の充実や、学校を巡る動きについて新たな関係を広げていくことにもつながっていきました。

親の会の定期開催

これまですでに関係ができていた人たちに新たなメンバーも加え、これまで個別対応してきた普通学級に通う障害児の親の会を2ヶ月に一度のペースでおこない、相互の情報交換や現状の問題点を話し合い、テーマを共有化する一方で、個別の学校や学務課との交渉も重ねてきました。

知的障害者のためのガイドヘルパー講座の立ち上げ

そして障害者の自立支援を進めていくため、また新しい関係を作り出していくために連続講座を開催することになりました。柿のたねはこれまで、単発の講演会や学習会はおこなってきましたが、外に向けての連続講座は初めての試みでした。そのため日本財団に助成金を申請したところ、無事受けることができ、関係を広げていくべく、立ち上げのためのプログラム会議にも他の地域で活動するグループの方々に呼び掛け、三月から月に一度のペースで中身の検討を続けてきました。この9月からいよいよその講座もスタートしました。

これら昨年度の活動を踏まえ、今年度は以下の3点を重要課題として、その解決の道を探っていきたいと思います。

障害児の学校の付き添い介助体制確立のための支援

普通学級に通う障害児にとって、今の学校は在籍を見とめるのがやっとの状態で、現実にはそれすらも高い壁があるのが実情です。これまで学校教育法施行令の改正について通信で何度か報告してきましたが、ついにこの9月から施行されました。その中では特別な条件を満たした障害児は「認定就学児」という措置基準が設置されました。特別条件とはハードやソフト面の周辺環境、本人の身辺自立可能なことなど、学校運営に支障がない場合ということですが、介助等の地域での支援、ボランティア体制があれば、特別な事情として勘案するとも言われています。目黒区の学務課長との話合いの中でも、介助についてどうするか、教員の研修について検討が必要だという話もあります。問題点は山積みしていますが、現在通っている子どもたちは日々成長していきます。まずは付き添い体制確立を目指し、そこから統合教育の道を探っていきたいと思います。

障害者が地域で生きていくための支援

今年度前半は、先にあげたガイドヘルパー連続講座が続いていきますが、その間にも支援費制度の内容は少しづつ固まっていきます。ヘルパー事業の民間委託化により、今まで以上に支援の質は問われてきます。私たちはその動きをきちんと見据え、障害者と健常者がお互いに支え合いながらいっしょに地域で生きていける社会を目指していかなければなりません。具体的には今回の講座のような企画を定期的に開催していくこともその方法のひとつだと考えています。

財政の再建

現実的には直面している最大の命題ともいえますが、やはり何もないところから始まった柿のたねにとって、地域の方々から提供された品物による、リサイクル事業の立て直しは大きな課題です。市やバザーが減収した分をガレージセールやフリーマーケットなど、販売ルートを増やしていく中で、物品の有効活用を計り、収入増を進めていきたいと思います。また維持会費やボーナスカンパなどの寄付金収入についても、今後柿のたねが何をしていくのか、それをどういった形で還元していくのかを考えながら整理をして、きちんとした報告をする場を作っていきたいと思います。

一方で、既存のものだけではない新しい展開として、新規事業の開拓も必要だと考えています。これまではあまり助成金を受けずに活動してきましたが、今回の東京マイコープや日本財団のように、目的を明確にした上で助成金を利用することが必要なのかもしれません。

支援費制度で変わること

今回の講演では講師に八王子福祉園の地域支援担当をされている伊藤勲さんに支援費制度についてお話を伺いました。事前にお話をした時、8月末の時点では具体的な中身があまり決まっていないので少し時期をずらした方がいいのではとのことでしたが、無理にお願いし、現状の問題点について「支援費制度に関する45の疑問」というかたちで整理してお話していただきました。

これまでの障害者福祉は措置制度で支援費制度に変わることで申請者は障害者本人、建前上は選択肢も当事者側にあることになっていますが、本人の意思がどこまで尊重されるかは、受けるサービスや行政の違いによって変ってきます。また支援費といっても本人にお金が支払われるのではなく、行政とサービスを提供する事業者との間でやりとりされる、言わば頭越し状態です。45の疑問を説明するにはあまりに時間が短かったのですが、その中で話された、伊藤さんのもう一つの顔、特定非営利法人「やまぼうし」の専務理事として、いろいろと活動されているグループホームや自立生活の話はとても興味深く、柿のたねとしても多いに参考になる話でした。

今の社会はいろんな部分で変革の時を迎えています。教育や福祉の問題はけして人事ではありません。みんながしっかりとその動向を見つめて行動し、誰もが暮らしやすい社会になることを切に願っています。

今後も柿のたねの活動をご理解いただき、ご支援いただけるようよろしくお願いします。

(櫻原)

知的障害者のためのガイドヘルパー講座(第1回)
知的障害者のガイドヘルパーとは何か? 当事者と支援者の話の中から見えてくるもの

今年の最大イベント、知的障害者のためのガイドヘルパー講座が、いよいよスタートしました。この春から準備の会議を重ね、講座の内容について検討してきましたが、その中で自分自身もあらためて当事者たちとの付き合い方について考えさせられるいい機会になりました。

はたしてどれだけの人が参加してくれるのだろうと不安な部分もありましたが、広報めぐろや公営掲示板、目黒区社会福祉協議会の通信などに案内が掲載されると、相次いで参加の申し込みがあり、当初私たちが考えていた20名程度の予想を大きく上回る約40名の応募がありました。

参加者の方々の年齢や立場も様々で、あらためてみなさんがこのテーマに関心を抱いているのだということが伝わってきて、とてもうれしく感じました。

9月21日の第1回の講座では東大阪市のピープルファースト事務所「はっしんきち ザハート」の代表をされている生田進さんと、ずっと会議から参加していただいている通所授産施設「クリエイティブハウス パンジー2」の施設長、林淑美さんを講師に迎え、ビデオや生田さんの話から当事者の生の声、姿を知ってもらい、知的障害者が置かれている状況や、当事者がヘルパーに対し、どんなことを思い、感じているのかを伝えていただきました。

講座終了後に提出していただいたアンケートには、生田さんの話が聞けてよかったという感想が一番多く、やはりまずは出会いが 大切なんだ、知ってもらうことからしか何も始まらないという事を再確認しました。

ただ、当日参加されていた方からも発言がありましたが、人前で話ができる生田さんだからこそ自己決定もできる、重度の知的障害者には難しいのではないかという気持ちが多くの人たちにあると思います。もちろんそんなことはありません。人それぞれコミュニケーションの手段に多少の違いはあるけれど、誰もが自分の意思を持って生きています。それをどう受けとめ、ガイドヘルパーとしてサポートしていくのかが大切なのです。そのあたりについては今後の講座の中で、みんなで考えていきたいと思います。

(櫻原)