2002年6月の柿のたねニュース

学校教育法施行令の改定で都教育委員会と話し合い

学校教育法施行令の「改正」は4/19に閣議決定されました。内容については前号でお知らせしていますが、一番の問題は、普通学級に入ることのできる「認定就学児」を作っていくことが、「非認定就学児」を生み出すということです。その基準を各市区町村の教育委員会が決めていくと言うことになります。

そこで、都の教育委員会が各区教育委員会にどういう指導をするのかということが大きな課題になります。

施行令改定の取組みの中でできた「共に生きる教育を考える東京ネットワーク」で6/12都教育委員会との交渉をもちました。

都としては、いままで重度の障害をもった子も普通学級に通学することを実態として認めてきた経緯もあり今回の改定との関係で戸惑っているという印象をうけました。現在中身を読み込み中であり、区部への説明会を通して問題点の洗い出しを行っているということでした。

認定就学を認める特別な事情は、学校の環境の整備状況(学校に専門的教師がいるかどうか、施設設備が整っているか等)がどうか、専門家の意見等を勘案して、総合的に判断していくことをスタンスとし、保護者の意見即選択権ではない、バリアフリーの現状に対しては認定したから整えるというのではないという答でした。

特別今までと違った見解ではありませんが、区教育委員会はもっと現場での課題に立たされるわけです。9月からの施行となっていますので目黒区教育委員会との早急に話し合いをもっていくことが必要です。

昨年からの施行令「改正」に対する闘いは、実質的な本番に入ります。

多くの方の関心と力が必要です。協力して下さい。

(伊東)

最近の生命の扱われ方−資源としての生命−

ついにヒトクローン妊娠中(イタリアの医師が発表したが真偽は問われている)だの、他人から卵をもらって体外受精することを認めるだの、卵銀行を作る(治療の前に卵を保存しておく、将来の妊娠に備えて若いうちに卵を保存しておく)だの最近の新聞には、生命をめぐるニュースが飛び交っています。

それに呼応するかのように、内閣府・文科省・厚労省に生命倫理関連の委員会も乱立しています。で、それぞれにガイドラインを作っているので、これも支離滅裂状態です。

さて私は現在、その中の一つ、厚生科学審議会科学技術部会「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会」の委員というものをやっています。読んだだけでは何だかちんぷんかんぷんですよね。再生医療のために、体性幹細胞を人間に使うためのガイドラインを作ろうという委員会です。こう書いてもまだわかりませんよね。

再生医療とは病気になったり、壊れてしまった組織を再生しようということですが、幹細胞はまだ組織に分化していず、それぞれの組織に変わる可能性があるはずなので、それを使ってさまざまな組織を再生しようということになります。有名なのは血液の病気に対する骨髄移植・臍帯血移植ですが、この骨髄も骨の再生や、血管の再生に使おうとしていたり、神経や肝臓の幹細胞の研究も進んでいます(もちろん、それぞれまったくの実験段階ですが)。

研究発表を聞くと、血管再生医療の臨床実験で心臓病で亡くなっている人が複数いたり、神経細胞の再生では、まだ動物実験段階で成功していないにもかかわらず、パーキンソン病や脊椎損傷が治ると強調されていたり、開いた口がふさがらない状態です。必ずそれぞれの発表にその治療の対象になるであろう病気などの人数が出てくるのも印象的でした。つまり、「患者が待ち望む」再生医療のため、と多くの人が納得する(または反対しにくい)旗を掲げ、自分たちの研究を進めていく。でも、原因や予防のための研究は進んでいるのだろうかという疑問が沸いてきます。

患者のため、不妊治療のためと生殖補助医療が発達してきた影で、多くの女性たちが実験台となってきた一方で、環境ホルモンや不妊の原因を追求するための研究はほとんど進んでいない実態とオーバーラップします。

その上、成人の幹細胞はうまく分裂しないので、中絶胎児の細胞を使いたいという声まで上がってきています。卵も、精子も、受精卵も、胎児も、生まれてきた人間も、そしてその組織、細胞すべてが資源として考えられているとしか思えないのです。

もちろん学者の中には純粋に医療の現場で患者のために役に立ちたいと考えている人もいるでしょう。でも、病気や障害を悪とし、科学の進歩を疑わない意識と、生命に対する軽視が研究を支えていることも事実です。このまま進んでいくとますます、これらの意識は強化され、いのちのモノ化も進んでいくのではないかと危惧します。

巨大な壁の前で、1人では何もできないので、いろいろな人の知恵を借りながら、なんとか少しでも歯止めをかけたいと思っています。メールで委員会報告を送ってますので、関心がある方はご連絡ください。次回からお送りします。そして一緒にどうあるべきか議論に参加してくださる方もご連絡ください。

(さとこ)

目黒区就労支援センター報告
グリーンカフェ都立大がオープンします!

 以前に通信で紹介した、目黒区就労支援センターがスタート以来一年を経過しました。当初売上高が心配されていた、喫茶部門のグリーンカフェ西郷山も新メニューを入れたり、ミニギャラリーとして写真展示をおこなうなど、スタッフの絶え間ない努力と工夫、時間の経過とともに認知度も上がり、安定した実績を上げています。また主目的である一般企業への就労支援については、設立の際の予想をはるかに上回り、多くの正会員が就職に結びついています。就職難の現状の中、当事者一人一人のがんばりがこの結果を生み出したことはもちろんですが、スタッフや援助会員による面接同行やジョブコーチなどのサポートが確実に後押しをしています。理事会で報告を受け、あらためて就労支援センターの重要性を実感しました。

 一方で、一般企業に送り出した結果、就労訓練の現場では職場維持の難しさにも直面しています。清掃・喫茶部門とも仕事に慣れ、実力がついてきた当事者が抜けていく訳ですから、現場担当者にかかる負担は大きくなります。特に清掃部門では区から下請けした業務を確実にこなさなければならないため、現状では正会員が抜けた穴を援助会員が埋めて作業をしています。

 また、就職した正会員の定着支援として定期的な職場訪問や会社・家庭との調整なども継続的におこなう必要があります。特に生活面においては余暇の過ごし方や、次のステップとしての自立支援のあり方などまだまだ課題は多く、就労支援センターだけでは担いきれない部分をどうサポートしていくか、行政や関連機関、柿のたねとしてもなんらかの形で応援しながら地域のネットワークを広げていくことができたらと思います。

 そして今回、就労支援センターの喫茶部門に新しく「グリーンカフェ都立大」が都立大学跡地の区民キャンパスに7月12日オープンします。西郷山店とはまた違ったカラーを出しながら、美味しい珈琲をテイクアウトもできます。ぜひみなさんの御愛顧をお願い致します。

(櫻原)