2001年5月の柿のたねニュース

統合教育と「子どもの権利」学習会

条約・条例・サラマンカ宣言・基準規則

「『ありのままの自分でいる権利』なんて、おとなだって大切な権利のひとつだと思ってるよね」『川崎市子どもの権利に関する条例』(以下『条例』)が制定され、市内各地で行われた「子ども集会」のワークショップに参加する子ども達の姿を見ていたら、こんな感想をもらす人がいた。「そりゃ、そうだ!」と答えた私は、この条例が障害児にとってもよりよい環境へと向うきっかけになってほしいと願ってきた。誰にとっても大切な「ありのままの自分」のことを「自分で決める」ことが認められ保障される社会であって欲しい。

ここ数年、『障害者の機会均等化に関する基準規則』(1993年、以下『基準規則』)や『子どもの権利条約』(1989年、以下『条約』)を踏まえて策定された『サラマンカ宣言』(1994年、以下『宣言』)など統合教育の問題にかかわる施策が国連において次々に採択されている。「インクルージョン」という余り耳慣れない言葉も登場し、なんだかまだまだいっぱい勉強しなきゃいかんなぁ…、と思っていたところ伊東さえ子さんと学習会をやろうという話になった。そう、難しい条文なんぞなかなか頭に入らない。みんなでわいわい話し合う方が、現実にどう反映できるのか見えてくるかもしれない。『条約』の中に「子どもの最善の利益」と「意見表明権」についての条文がある。このあたりがキーワードになるのかな、と思う。『基準規則』の中では「完全参加」がうたわれていて、『条約』・『条例』に「参加する権利」の考えとして、生かされている。『宣言』には、「インクルーシブ学校・教育」という言葉が何度も登場し、あるべき学校の姿のようなことが盛り込まれている。どの子も差別されることなく「安心して生きる権利」を「保障する義務」ある私たちおとな。「まずは、おとな自身が幸せに生きてください。」という『条例』づくりに参加した子ども委員たちのメッセージがある。「条例」や「規則」ができたからといって、チチンプイッ!と世の中が変わる訳じゃない、ということを一番よくわかっているのは子どもたちのほうかも知れない。

学習会は、何回かに分けテーマを絞って少しずつ進めていこうと思います。子どもの権利に統合教育を掛けるとどんな答えが出るのか…。皆さんも一緒に考えてみませんか。

(比気みどり)

障害児を普通学校へ・全国連絡会 第10回全国交流集会

第10回全国交流集会開催します。場所は目黒。多くの人の参加を!

全国の仲間の経験を知ろう。

自分たちの闘いを工夫しよう。

一人ではないことを実感しよう。


1981年「障害児を普通学校へ・全国連絡会」は結成され、今年で20年目を迎える。2年に一度の全国集会であるため10回目である。

場所は目黒にある「こまばエミナース」。

東京でやるのは賛成だが目黒は反対。全国連絡会の運営委員会で私は思わず言ってしまった。柿のたねの仲間たちは柿のたねの前身「目黒教育を考える会」の時からの付き合いが多く普通学級で学校生活を過ごしてきている。けれども彼らの成長に伴って学校後の課題にテーマが移ってきた経緯がある。今私たちは学校のテーマに十分に取り組めていないからだ。地元でやるからには自分たちの主体的な関わりは義務ではないかと生真面目にも考えたからだ。

20年。邦彦君が普通学級に通っていたのは30年前。その間に普通学級に通いたいと闘ってきた多くの障害をもったこども達と親との出会いがありながら、今私たちが直接一緒に付き合い続けている仲間は数人である。自分たちの力不足と普通学級に通い続けていくことの困難さをあらためて考える。

しかし、この間、不安を抱えながら普通学級に行くことを望み、通っている障害をもった子ども達、親ごさん達とかかわる機会を持つことができた。そうなのだ。後から後から「どの子も地域の学校へ」通うことを望む人たちは続くのだ。力不足だが、この全国交流集会を今必死になって普通学級に通い続けているまた通おうとしている子どもたち、親たちの闘いの糧にしようと考えた。

当日、柿の木ハウスの邦彦君の自立生活の実践報告を櫻原が行う。また、自分たちにとって普通学級とは何だったか、卒業した本人たちの気持ちを聞くセクションを設けようという話が進んでいる。

昨日、ハンセン患者への国家賠償の控訴断念が発表された。隔離政策の間違いを国家が認めたわけだ。「人間になれた」と一人の患者は言った。

隔離の非人間性。その壁を打ち破るために地域の普通学級に通い続けることを目指してきた。ハンセン病が隔離にあたらないという国連、WHOの勧告を40年も無視し続けてきたように、「子どもの権利条約」を批准だけして国内法は何の改定もしないわが国の文部省を始めとした人権意識の低さは、「21世紀の特殊教育のあり方について」において、重度の知的障害児をはずして普通学級への枠を広げるというおためごかしで、世界の「統合教育」への流れに対応しようとしている。

柿のたねでは「子どもの権利条約」から「障害者の機会均等化に関する標準規則」「サマランカ宣言」の学習会を連続して開催することとした。学校を巡る状況は大きく変わろうとしている。私たちは別学体制そのものを壊していく力をつけなければならない。全国交流集会に参加することをその機会のひとつにできたらと思う。また交流集会の前後には「21世紀の特殊教育のあり方について」文部省との交渉を予定している。

(伊東さえ子)

優子さんのお茶会へいってきました

もう恒例といっていいのではないかしら。優子ちゃんの1年の成果を披露してもらいに春というよりも、初夏のような気候の中、1年ぶりのお茶会に行ってきました。

会場であるお師匠さんの家子さん宅に向うと、すでに何人かの先客が……。いつもと違う場所のせいなのか、優子ちゃんを始め、家子さんや琴絵さんの着る着物のせいなのか。ついつい小声でお話してしまう。

そんな中、優子ちゃんはこなれたもの。昨年は、動きがぎこちなく、まだ慣れない観もありましたが、今年は、比べ物にならないくらいで、流れるように動いていく手先に、「継続は力なり」の一言の偉大さをかんじる私でした。

わたしも小学校の頃、親友の御婆様にほんの少しの期間ではありますが、真似事程度にお茶を習ったことがあります。あの時は、ただの手順にしか見えなかった動きの一つ一つに意味があり、流れがあることをわかり、幼い頃にはわからなかったお茶の魅力を優子ちゃんの御手前に教えて貰いました。

先生の家子さんも亭主の優子ちゃんも普段と少し違う顔で私たち招待客を迎えてくれる。私たちもいつものメンバーが半分以上なのに、何となくいつもと違う雰囲気にぎこちなさを感じつつも結構、心地よかったりする。そんな時間を演出してくれるお茶会の力に改めて不思議なパワーを感じた1日でした。

一つの卓を囲んで井戸端会議もそれなりに楽しいですが、たまにはこんな集まりも悪くないものです。もちろん、魅力的な亭主あってのことではありますが……。

優ちゃん、慣れない着物姿で何度も御手前を披露していただき、ありがとうございました。大変、結構なお味でございました。

また、来年も楽しみにしています(笑)。

(たつみ)

“グリーンカフェ西郷山”オープン!

おいしい外一そばとデリシャスなコーヒーをぜひご賞味ください!

これまで通信でも何度か紹介してきた目黒区障害者就労支援センター(以下支援センターと略す)の喫茶部門が5月24日(木)からいよいよスタートしました。4月からすでに開始している心身障害者センターあいアイ館の清掃部門と併せて本格始動ということになります。

オープニングパーティーは市と重なり出席することはできませんでしたが、私もオープン前の試食というかたちで(ちょっと役得?)お蕎麦とコーヒーをいただいてきました。

西郷山公園の上、旧山手通り沿いに位置するこのグリーンカフェは支援センターの事業の2本柱の一つとして障害者の企業等への就労をサポートし障害者の自立に寄与することを目指した、トレーニングフィールドとしての機能、機会の場であると同じに、今後の支援センターの運営を円滑に進めていくための重要な試金石となります。清掃部門は区からの委託費があり収入は定まっていますが、飲食店舗では日々の売上が全てです。つまりはここでどれだけ収入を稼ぎ出すかが大きなテーマです。

それだけにメニューについては事務局を中心に理事会でもいくどとなく検討され、試行錯誤を重ねてきました。その結果これはけして身贔屓ではなく、自信を持ってお勧めできるものとなりました。

外一そばは石臼で玄蕎麦の甘皮まで挽き込んだ山形県大蔵村産の「ひきぐるみ粉」を十一分の一のつなぎを使って仕上げた清涼感いっぱいのおいしさだし、コーヒーはこだわりの一品。原料の生豆中に含まれる不良・欠点豆が手作業で取り除かれ、炒りムラがなくしっかりと火がとおった豆を使っていて、大袈裟ではなく私がこれまで飲んだコーヒーの中でも上位ランキングに入るデリシャスな味。コーヒー通にけして文句を言わせない香りとコクで勝負しています。他にひけを取らないいいものを提供してこそ、障害者の就労支援も成立します。福祉事業のお店だから仕方がないとだけは思われたくない。そんなスタッフの思いがいっぱい詰まったカフェテリアです。

ただ、なにぶん始まったばかりのことでもあります。接客業は緊張もするだろうし、たまには失敗してしまうこともあるかもしれません。そんな時はどうか優しく声を掛けてあげてください。その一言がスタッフを育て、いろんな経験が自信や実績となって必ず力を身に付けていきます。ぜひ一度おいしいそばとコーヒーをご賞味いただいて、できればリピーターとして支えていただきたいと思います。

そしていつもながらのお願いですが、せっかくのステキなお店もまずは知ってもらわなければお話になりません。それにはやっぱり口コミがいちばんの宣伝手段です。ぜひともご協力をお願いします。

グリーンカフェの名の通り青葉が眼に映え、いろんな花が咲く西郷山公園はお散歩コースやデートスポットとしては最高の場所です。ぜひみなさんのアメニティーゾーンとしてご利用いただければ幸いです。

(チェリー)