2001年4月の柿のたねニュース

「自然」と「元気」。それでいこう

「ひなたぼっこ」「こどものそら」連荘鑑賞記

まだ肌寒い3月下旬東中野BOXで本当に久しぶりに映画鑑賞。チェリーとは初の映画デイト。心躍るということはないが会議に出かける道行きとはチト違う。忙しい毎日、どうせなら一挙に2本の映画鑑賞という強行軍だ。

千葉で普通学校に通う障害を持った5人の高校生たちの日々を追った「ひなたぼっこ」と、障害をもった子も持たない子も一緒に放課後を過ごす札幌の民間の学童保育「つばさ」の子ども達を撮った「こどものそら」だ。共通している印象は「元気」と「自然」ということだ。

20数人の子ども達がすでに高校に入学・卒業しているちばMDエコネットは自分たちで映画を作り出した。彼らのめざしている地域活動は作業所に障害者だけを集めて指導員が指導するというあり方ではなく、多くの場所に出て行くことである。そのひとつとして遊休地を緑に変えていく「グラウンドワーク」という取組みがあり、それを地域住民と行政と企業でのパートナーシップで取り組んでいくという新しい発想だ。これは「柿のたね」がイメージしてきたものと近い。そして彼らは元気だ。

「こどものそら」の子ども達はほんとに元気だ。ワンフロアーに70名の子ども達が通う(毎日の人数ではないだろうが)つばさに5名の障害を持った子ども達がいる。まさに入り乱れての喧騒はすさまじい。最初の障害をもった子どもの入所をめぐる会議で「自分たちの子どもの時にはこんな問題にならなかったにどうして障害をもった子の場合は問題になるんですか」という母親の言葉で障害をもった子の受け入れは決まったという。「障害をもっていなくても手のかかる子はいる。その子その子なんだ。子どもたちは必要なサポートはわかっていてそれ以上のことはしない」と指導員は言う。共に過ごす子どもたちの集団力を信じた言葉だ。大人も元気だ。

「自然」には2つある。ひとつは千葉、札幌の豊かな自然だ。千葉では遊休地を緑に変え野菜を作っていく彼らがいる。広い土地の真ん中に立つドーム状の野菜棚は大学の教室のかかわりで設計され、資材は企業の協力があった。見事に緑に変わっていく遊休地に柔らかな風が吹く。「こどもたちの空」は放課後・自転車・雪合戦の3部作になっている。雪合戦で爆発するする子どもたちのエネルギーは圧巻だ。陣地を作り、雪にまみれ、相手を攻略する。一面雪で真っ白な公園に夕日が映える時間まで子どもたちの雪合戦は続く。動けない障害をもった子は玉の保管係であり、そりを引いてもらって攻撃に行く。そしてその両陣営には子どもたちと雪合戦を心から楽しむ指導員がいる。大人も本当に元気だ。

もうひとつのの自然は、障害を持った子ももたない子も共にあることだ。定時制高校のブラスバンド部。少ない練習時間に懸命にドラムを練習する晶生くんをリズムがそろうまで付き合う友達がいる。幼馴染の女友達とバックをショッピングする淳君がいる。縄結びがうまくいかない由幸君をじっと待つボーイスカウトの先輩がいる。文化祭のアナウンスをする江美子さんにQの間合いを取ってくれる友達がいる。

新しく学童を作ろうとするつばさとは別の親たちの取り組みが開始され、障害をもった子ともたない子の新しい放課後が始まった。

高校を卒業した彼らの人生は始まったばかりともいえるが、生きることを楽しんでいるように見える。自然に元気に。

(伊東さえ子)