2001年1月の柿のたねニュース

あけましておめでとうございます 今年もよろしく

いよいよ、21世紀に突入しました。私が子どもの頃はSFで描かれる遠い未来のことだと思っていた宇宙旅行や、人型ロボットがだんだん現実のものとなりつつあります。パソコンや携帯電話の普及率もめざましいものがあり、科学技術の進歩の速さには驚かされるばかりです。一方で、学級崩壊や異常犯罪の多発など人間の心の部分は技術に追いつけず、取り残されているような気がします。脳死による臓器移植や、クローン技術など生命に対する倫理が未成熟なまま先に進んでしまうことへの危機感すら覚えてしまいます。

柿のたねも1986年にスタートして以来早いもので今年の8月に15周年を迎えます。健常者だけでなりたっているような社会のあり方に疑問を感じ、障害者も健常者も一緒に地域で生きていけるための場作りをこれまで進めてきました。

15年前はB4のペラ1枚を手書きで作っていたこの通信も、今ではパソコンを駆使して毎月900部以上の発行数になりました。時々のいろんな情報を発信し、問題提起もおこなってきましたが皆さんのお役に立っているでしょうか。

設立のきっかけになった無着邦彦さんは実家を離れての自立生活が6年目になりました。後続の孝広くんや優子ちゃんも定時制高校を卒業し、それぞれパートの仕事をこなしながらその次のステップとして近い将来の目標を自立生活に置いています。

毎月第3日曜日の市は、初めの頃提供品募集のチラシ投げ込みをしたりと物集めに大変でしたが、今ではおかげさまで定着し売上こそバブル崩壊とともに減少しましたが、貴重な収入となっています。補助金等に頼らず、カンパとリサイクルの自主財源だけでよくここまでやってこれたなと、正直に思います。

しかしその一方で、深刻な人手と財源不足にも直面しています。活動の輪が広がると同時に仕事量も増え、出費もかさんでいきます。家屋や備品なども疲弊し、スタッフも個々のエネルギーを消耗させながら現状を支えています。このままではいずれ行き詰まることは明かで、なんとか解決を図ろうと昨年の14周年を契機に今後のために、これまでの活動を見直す会議を重ねてきました。業務を円滑に進めるためには専従体制を拡大するしかないのですが、その財源確保のためリサイクルの販路を広げると同時に企業や財団からの助成金も検討しなければなりません。ただどちらも不確定要素を伴なっています。

今回のボーナスカンパでは危機的な財政状況に対し、みなさんからの多大なご支援を賜りました。本当にありがとうございました。多くのみなさんに支えられて柿のたねの活動が成り立っているということをあらためて実感しました。

……慎み深く陰ながら支えてくださるお気持ちを、もう一歩踏み出して今度は私たちと一緒に活動を育てていきませんか? 厚かましいお願いであることは十分承知しているつもりですが、ぜひとも考えていただきたいのです。毎月の市の売り子さんや、平日の仕分け・値段つけ作業、お料理が得意な方は金曜倶楽部の担当を2月に一度でも構いません。みなさんと顔が見える、声が聞こえる、気持ちが通い合える関係を、出会いの場として設立した柿のたねで一緒に作っていきたいのです。

視点を世間に転じてみると、「バリアフリー」、「ノーマライゼーション」といった言葉が確かに以前に比べて浸透しつつありますが、どれだけ実感を持って体験できるでしょうか。大きな駅の隅にひっそりとある不案内なエレベーターをみかけると、かえって区別化が進んでいるのかななんて思ってしまうこの頃です。だれもが楽しく暮せる社会をみんなが関心を持って実現したいですね。

(櫻原雅人)