2000年12月の柿のたねニュース

就学時健康診断を考える集い報告

風化する学校介助員制度・子供を受け入れるための介助員制度に!

今年の就学時健康診断を考える集いは、学校での介助制度をテーマにした。

障害をもった子が普通学級に通おうとした時、現在の学校は親の付き添いを当然のごとく条件とする。親にとっては、24時間の介助を、子供にとっては、学校という社会生活で親からの自立を学んでいく機会がはばまれる。こうしたことが、障害をもっている子には当然とされる。

榎本佑紀ちゃんの学校での介助をめぐり、お母さんが体調を崩す事態の中で、教育委員会と交渉し、現在週3回介助員、残りを親で介助している。交渉の席上で学校介助の運営規則があることをはじめて知った。

介助者会議では、どこまで介助をすればいいのかということを模索する議論が続けられている。手のかけすぎは、他の子と佑紀ちゃんを引き離すことになり、先生にとっては佑紀ちゃんは介助者に任せればいいという発想になる。この矛盾をどうすればいいのだろうか。

そこで、川崎市で7年間の歳月をかけて「補助指導員派遣制度」をつくった「川崎・普通学級で学び生きること連絡会」世話人の小谷典子さんをお呼びして「介助制度」の功罪について話をお聞きする事とした。

川崎市でも多くの親がつきそいを条件にされてきた。そうした中で、1989年親の体調でやむなく通級した「障害児学級」で教師による暴力で子どもの命が奪われた。この事からこの運動は本格化した。

市との度重なる交渉はラチあかない。そこで神奈川県教育委員会へと交渉の場を広げていき副知事交渉で県の補助金交付要綱が作られた。その後、県内の多くの市の事業開始の中で、当の川崎市に介助員要綱が出来たのは1996年のことだった。川崎・ひまわりの父母の会が最初の要求を出して実に20年近い年月が経っていた。

小谷さんたちは、介助に対する親の拒否権を認める事、最初から介助をつけず、まず、学校でやってみること、介助をつける場合は1学期間で区切る事など、学校がどう子供たちを引きうけていくかということをこの制度の主旨として求め続けてきた。しかし、市の担当者の移動や、安易に利用する親が多くなる中で、その主旨が風化しつつある。

制度化することで親と子の切実な現状はとりあえずは解決するが、なぜ普通学級なのかという本質的な問いが欠落していく。行政や学校に受け入れる意思がない中で、制度化という普遍化をたどればそれはやむ得ない事とも言えるが、そのことをどう解決していくかがやはり問われるのではないか。

自分たちで作ればいい。そして、その力で制度化する道筋をたてなければ拮抗できないのではないかとふと考える。

集いは、孝広君からビラを受け取ったという来年入学の方、再来年入学の始めての方を含め16名の参加者だった。障害児にとっての学習の意味、学校は一体何をする所だ、様々な質疑と話し合いで時間ぎりぎりの充実したものだった。

(伊東さえ子)

教育長と障害児の普通学級受け入れについて話し合いました

今年もやっと就学時健康診断が終わり、校門前の当日ビラまきもそれに伴ない終了しました。ホットラインでは結局一件も相談がありませんでしたが、就健を考える集いの方は初めての方も見え、なかなか充実したものとなりました。

最後の締めくくりとして12月15日、就任したばかりの大塩新教育長と話し合いの場をもちました。

出席者は大塩教育長、伊藤学務課長、こちらからは八名が参加し、これまで前教育長と続けてきた話し合いの中身について、確認と継続を申し入れました。全体的にはこちらの考え方について理解を示していただき、項目別に挙げた要望に対し柔軟な姿勢を感じましたが、30分という短い時間の中ではなかなか予算の関係、法制度の枠内というあたりは簡単には超えられず、今後も機会を設けながら話し合いを続けていく必要を感じました。教育長退席後は伊藤学務課長と、具体的に今普通学級に通っているケースや来年入学する人の個別的な話になりました。

現状では、障害児の普通学級受け入れについては学校毎の判断にまかされており(家族、本人が望む場合に受け入れ拒否はしない事は確認されています)、介助をつける場合についても個々のケースでまちまちになっています。障害の程度に関わらず親の付き添いが前提になっている学校もあれば、中には付添いを必要としなかったり、必要な時に学校の判断でつけているケースもあるようです。またクラスを受け持つ担任の資質も大きく影響し、いつまで経ってもお客さん扱いされている場合もあります。基本的には地域の学校に行くのが一番望ましいことなのですがこのような状況の中、家族の側も越境入学を考えたり、普通学級に在籍しながら障害児学級に通級せざるをえない実情があります。おにいちゃん、おねえちゃんが地元の学校に通っているのに自分は違う学校に行かなければならないとしたら、その子どもはどんな思いを胸にすることでしょう。また、同じクラスの子どもたちが興味を持って付き合っていこうとしている時に先生がいつまで経っても特別扱いしていたら、子どもたちはそれをどのように受け止めるのでしょう。確かに普通学級の中ではいじめや勉強の遅れなどの問題はありますが、それを理由に分離していたら、なにも変わりません。どう解決するかに、大人たちの知恵が求められているのです。

(櫻原)

普通学級における障害児の受け入れについての要望

過日、平尾前教育長に対し私たちがこれまで要望を重ねてきた普通学級における付添いについて、継続してご検討いただく旨お願いいたしました。

大塩教育長ご就任に際し、あらためて教育委員会の方針を伺うとともに普通学級に在籍する障害を持った子と親が安心して学校生活を送る事のできる環境を作っていただきたいと思い、下記の点について要望いたします。

  1. 就学時健康診断の案内について、受けなくても入学通知は出すことを明記してください。
  2. 入学の際親の付き添いを前提にせず、介助が必要な場合は家族以外の者が付き添う体制を制度として実現してください。
  3. 普通学級で受け入れるためには、障害児への正しい理解が必要です。教職員に対する研修に取り組んでください。
  4. 学校内のトイレのドア、階段のスロープ化など設備の改善についてできる限り可能な措置をおこなってください。
  5. 本人と親が普通学級に在籍することを望む場合、必要以上に障害児学級等への転級指導をおこなわないでください。

サラマンカ宣言や子どもの権利に関する条約など、世界の趨勢は障害のあるなしに関わらず誰もが普通学級で学ぶ統合教育に向かっています。ノーマライゼーションの理念の実現に向けて学校現場を預かる教育行政として、まずできるところから現状を変えていただきたいと強く願っています。