「新しい時の始まり(その1)」

「初めに、神は天地を創造された。」
 これは聖書の書き出しです。神様が天地つまり宇宙を創造されたことから、全てが始まりました。勿論、神様は宇宙を創造されるより以前からおられました。余談ですが、宇宙を創造される以前、神様は何をしておられたのでしょうか。ルターは、そんなことを尋ねる子どもに、「そんな質問をする子どもを懲らしめるための鞭を作っておられた」と答えたそうです。ルターのユーモアが伺われます。ルターは、「そんな問いには誰も答えられないし、答える必要のないことだよ。それについては聖書は何も教えてくれてはいないのだから」と言いたかったのでしょう。

 神様が宇宙を創造されたその瞬間を出発点として、時が流れ始めました。今、自然科学ではその瞬間をビッグバン(大爆発)と呼んでいます。ビッグバンによって始まった宇宙は、時間と共に生成流転の末、幾つかの銀河に別れました。その銀河の一つである天の川銀河の中の太陽系の惑星の一つである地球に、神様は生命を誕生させられました。その生命は、ついに私たち人間にまで進化しました。いや、実は、神様の宇宙創造の目的は、初めから人間を造ることだったのです。私たちが地球を含めて宇宙と呼んでいる自然界は、人間が生きるための舞台として造られたのです。最初に舞台が造られ、その舞台が整ったところで、神様は人間をお造りになられました。ビッグバンから人間の誕生まで、宇宙は途方もなく長い時間を過ごしたことでしょう。しかし、その時間も神様にとっては、ほんのあくびの一つもできるかできないかの短い時間に過ぎなかったかも知れません。

 人間を造る目的が達成されたとき、神様は、いたく満足されました。聖書にはそのことが次のように記されています。「神はお造りになった全てのものをご覧になった。見よ、それは極めて良かった。」(創世記1:31)

 ここまでは、人間を含めた被造物即ち自然界が神様と一体となっている時、御心に適った豊かな時が、流れていました。この時の流れが突然乱されます。人間が神様に背くことを知ったからです。知ったとはそのように行動したということです。以来、人間は自分が乱した時の流れの中で生きて行かなければならなくなりました。それは、恵みの神様を怒りの神としてしか捉えられないが故に、神様から逃げ隠れしながらの生き方でした。(続)