「牧師の人事手続き(その3)」

 そこで、常議員会が人事に関してその責任を果たすために、何らかの権限を常議員会に与えなければならないのではないかということが検討されています。即ち、常議員会が必要と認めた人事が最終的には実現するように、招聘と応諾を基本にするという手続きに何らかの制限を加えるべきではないかということです。

 そこで、次のようなことが考えられています。
 日本福音ルーテル教会の規則の人事の章に、「教師の人事は、宣教方策に基づく、個々の教会、教区、本教会並びに施設の招聘及び教師の応諾に基づき常議員会が決議し、常議員会会長が任命する。」という規定がありますが、これに次のような1項を加えたらどうかということです。即ち、「前項の規定に拘わらず、常議員会は必要と認めるときは、招聘に優先する任命によって人事を行うことができる。」を。

 ここで問題になるのは、このようないわば強権を常議員会に与えることによって、各個教会の主体性あるいは個々の牧師の自主性が損なわれないかということです。これはなかなか難しい問題で、あちら立てればこちらが立たず式の問題になりかねません。要は、このような強権を常議員会が乱用しないようにすることが肝心な訳です。ですから、乱用防止策として何らかの仕掛けが必要です。そこで、次のようなことが考えられています。「本件決議には出席常議員の3分の2以上の賛成を必要とする。」を内規に規定する、ということです。通常は出席者の過半数の賛成で決議されるところを、3分の2の賛成を必要とすると条件を付けることによって、常議員会の権利の乱用を防ごうというものです。

 組織においては、常に全体と個の関係が問題になります。日本福音ルーテル教会という組織も、各個教会という個と、牧師という個、信徒という個によって構成されています。それらの間で、全体と個という関係が生じ、これがうまく噛み合っていかなければ、一つの組織体として機能しない訳です。

 日本福音ルーテル教会では、最高責任者を総会議長と呼びます。議長というのは、会議の主導者です。つまり、日本福音ルーテル教会は会議制を取っている組織なのです。これは、監督制の組織と違って、組織の意思決定をあくまでも会議で決めます。会議で決めるとは、関係する者の合意を形成していくということです。人事という教会にとって極めて重要な問題では、この合意形成に最善の努力が求められていると思います。(了)