「イラクはイラク人の手に」

 106人。これは、5月にブッシュ米国大統領がイラクでの戦争終結宣言をして以降、イラクで戦死した米軍の兵士の数である。戦争終結前の米兵の戦死者数を超える数字だという。ブッシュ大統領の戦争終結宣言にもかかわらず、イラクでの戦争は未だに終わってはいないのである。

 アメリカは、イギリスと一緒になって、国連の決議無しにイラクに先制攻撃を加えた。その主たる理由をアメリカは、イラクのフセイン政権がテロリストたちに便宜を与えていること及び大量破壊兵器を隠し持っていることと説明していた。圧倒的な軍事力の優位によって、フセイン政権は抵抗らしい抵抗をする間もなく滅ぼされた。確かにイラクはフセインの独裁政治から解放された。だが、肝心の大量破壊兵器はみつかってはいない。ここに来て、アメリカとイギリスの大義名分が揺らいでいる。しかし、今や、世界は、この大義名分が成り立たないのではないかという追求の矛先を、アメリカとイギリスから上手にかわされてしまっているようである。

 アメリカは、国連の決議無しに自分から始めたイラク戦争なのに、その戦後処理に手を焼き、国連の助けを求めている。国連にイラク復興のための多国籍軍の設置を提案してきたのである。しかも、国連の設置する多国籍軍といっても、最終的な指揮権はアメリカ軍が持つというものである。何とも身勝手な話である。

 そもそも、アメリカがイラク戦争に踏み切った裏には、イラクの豊富な石油に対するアメリカの執着があったのだと言われている。はるほどそうかと思う。だから、アメリカは戦争が終結したといってもイラクに居座り続けるのだな、と納得がいく。

 イラクで未だに戦闘が絶えないのはアメリカがイラクを自分の手で何とかしようとしているからである。イラク人は、アメリカがフセインの独裁政権を倒してくれたことには感謝しているだろう。だが、その後の国造りは自分たちの手に任せてくれ、と言いたいだろうと思う。アメリカはそのイラクの人たちの気持ちに思いを至らせるべきである。

 イラクに居座り続けるアメリカの姿勢は、イラク人の自尊心を傷つけ始めている。イラク人の心に、同胞であるフセインの独裁に支配される方が、外国に支配されるよりはましだという思いが生じて来るのも当然である。アメリカよ即時撤退せよ。