「み言葉の力」

 「福音は、私がこうしてビールを飲んでいる間も、ちゃくちゃくと広がっている。」ルターはそう言っていたそうです。彼の神様の言葉への信頼が良く現れているように思います。

 聖書に、「神の国は次のようなものである。人が土に種を蒔いて、夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出して成長するが、どうしてそうなるのか、その人は知らない」(マルコ4:26,27)とあります。もしかしたら、ルターは、この聖句を念頭において、あの言葉を言ったのかも知れません。

 今、教会の伝道が低迷気味です。私たち日本福音ルーテル教会だけでなく、プロテスタント、カトリックを問わず、教会の伝道に進展がみられません。何が原因なのでしょうか。今、教会はその原因探しに躍起になっています。そして、何とか対策を立てようとしてしています。でも、なかなか有効な対策が立てられません。成果が出ないのです。端的に言えば、洗礼を受ける人の数が増えないのです。

 私たち日本福音ルーテル教会でも、新しい宣教方策を作って、この事態を何とか打破したいと一生懸命に取り組んでいます。一つの狙いは、教会の持っている力、つまり、人材と資金を、できるだけ教会の外に向かって遣うことです。そのために、教会を統合し、教会の組織維持に用いる力を少なくします。牧師は、会議に時間を費やすよりも、伝道に時間を遣うようにしたいのです。教会を統合し、会計規模を大きくすることによって、それまで個々の小さい会計規模ではできなかった伝道の働きができるようにしたいのです。

 計画を立て、その計画を実行していくことは、伝道にとっても必要です。なぜなら、伝道は神様の業であるといえども、それを担うのは人間ですし、限られた人材と予算の中で行うべきことだからです。

 しかし、所詮、それらの計画は人間の知恵に過ぎません。福音は、神様の働きです。人間の業を超えたものです。教会の成長のために何かをしようとするとき、大切なことは、福音の力をまず信じることです。教会が本当に福音に生かされているならば、その教会は自ずと成長して行きます。ルターの言葉も、あの聖句も、そう言っているのではないでしょうか。

 一人の人の信仰の成長もまた然りです。信仰が成長するかしないかも含めて、神様に任せることが肝心です。