「狼の群れに送り込まれる羊」

 私たちが牧師としての按手を受けたとき、出席者を代表して祝辞を述べてくださった信徒の方が、「今日は、7匹の狼を羊の群れに送り込むようなものです」とおっしゃいました。そのとき、按手を受けた私たちは7人でした。この方が、イエス様が弟子たちに向かって言われた「わたしはあなたがたを遣わす。それは、狼の群れに羊を送り込むようなものだ」(マタイ10章16節)を念頭においておっしゃったということは想像に難くはありませんが、意識してこうおっしゃったのか、それとも言い間違いをされたのか、ご本人が亡くなられた今は、永久に謎になってしまいました。蛇足ですが、それ以来、私たち7人の同級生は、自分たちの会に「七狼(しちろう)会」と名付けました。

 この信徒の方のお気持ちはともかくとして、イエス様は確かに「狼の群れに羊を送り込むようなものだ」とおっしゃったのです。弟子たちが福音を宣べ伝える相手は狼だと、イエス様は言われるのです。福音を宣べ伝えるということが、如何に困難な業であるかが、イエス様によって宣言されています。この困難さはどこにその原因があるのでしょうか。

 「正しい者はいない。一人もいない。
  悟る者もなく、
  神を探し求める者もいない。
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  彼らの目には神への畏れがない。」(ローマ3章10〜18節)

 これが人間の実体です。誰も神様を求めてはいない。誰も神様を畏れてはいない。いや、神様に逆らっているのが人間の真の姿なのです。福音を宣べ伝えるとうことは、そのような人間を相手にすることなのです。神様に逆らっている人間に神様の愛を伝える。これが弟子たちの仕事です。そこには、必然的に迫害が生まれます。故に、弟子たちは狼の群れに送り込まれる羊なのです。

 だが、心配はいりません。なぜなら、弟子たちと共に、いつもイエス様がいてくださるからです。イエス様が先に狼と闘ってくださいます。弟子たちはその後をついて行くだけです。

 今日は、按手式の日です。新しくイエス様の弟子になられる方々の上に、神様の導きと祝福を祈ります。