「当世結婚事情」

「まず初めに、お二人が知り合った時と、その切っ掛けを話してください。」こう聞かれると、二人は、顔を見合わせて、ばつが悪そうに笑った。しばらくして、「2年くらい前です」と言うと、彼は、彼女と顔を合わせたまま、黙ってしまった。「切っ掛けは何だったんですか」と、私は、ひるまずに聞いた。「飲み屋です。」彼はぶっきらぼうに答えた。「飲み屋で、客同士で知り合ったということですか。」「そうです。」「2年前に、飲み屋で知り合って付合いが始まったということですが、結婚を決めたのはいつですか。」「つい最近です。」「式場の申込みは1ヶ月位前になされていますが・・・。」「その時です。できちゃったもんですから。」

「この人と結婚を前提に付合いをしようと思った決め手は何ですか。」「彼女のやさしさです。」「と、彼は言っていますが、それを聞いて如何ですか。」「嬉しいです。」「あなたは彼のどんなところに惹かれたのですか。」「やさしさです。」

「既に赤ちゃんができているということですが、子育てについて特に気を付けることなど、話し合っていますか。」「まだそこまでは話していません。」「子育てで一番大切なことは、子どもに、大人に成りたくない、という思いをもたせないことです。子どもが非行に走るのは、大人に失望するからです。子どもにとって、両親は大人の代表です。自分の両親が夫婦としてうまく行っていないと思うと、子どもは、大人全体に対して失望してしまい、自分が大人になることを拒否します。身体は大きくなって行きますが、心は子どものままです。そして、大きくなった身体を持て余して非行に走るのです。子どもを育てるポイントは、夫婦が仲良くすることです。仲良くするというのは、子どもの前でいちゃいちゃすることではありません。夫婦がお互いに信頼と尊敬の念をもって向かい合うことです。子どもは、自分の両親が信頼と尊敬の念をもって向かい合っている姿を見て、知らず知らずのうちに、大人になる喜びを感じるのです。そうなると、子育ては成功です。」

「今日は、結婚式ですが、今日から一生かかって夫婦に成って行くんだ、ということを忘れないでください。神様のお守りの中で、夫婦に成って行く歩みが、今日から始まるのです。」

 ある日、ホテルでの結婚式を司式する一時間前に行った結婚カウンセリングの一こまです。