あずまの日記。

6 apr(tue)

全く利潤を出すことのできない会社。

というわけで。わたくし、電機メーカーに勤める労働者になってしまったのですよ。研修が終わって、がっこにあいさつに来てみたらば。4年生しかいなく。とりあえずわがもの顔でWSにログインする。日記でも書いて帰りますかと。

泊まり込みで。四日間の研修。ああもう。想像どおりに濃いですよ。この研修。8:30から22:00ぐらいまで。土曜も日曜も返上ですよ。あいさつから始まって経営シミュレーションまで4日間でやっちゃいますよ。あっはっは。いくら不況でもそりゃ無茶ですよ。

4日間、あずまさんはわりと浮いてまして。25人のクラスの中で、変な発言をいっぱいしましたね。研修2日目にして学生の頃の勘が戻りましたね。他の新入社員のへっぽこな発表にはちゃんと意地悪な質問をぶつけましたね。ちゃんとギャグも入れましたね。面白くってしょうがなかったですね。でも、なんなんでしょうね。この、地に足の付かない感覚は。いつまであずまさんを演じればいいんでしょうね。

いまは70人ほど研究所に集められてまして。研究職希望の新入社員を振り分ける2年間の競争の始まりなのでして。それはいいとして、早くキーボードにさわらせてください。

7 apr(wed)

まだ机の上にあると思いますよ。

四年ほど前にお気に入りの腕時計をなくした。暗い光沢をもつ金属とガラスとの間から反射光を放つきれいな時計だった。それ以来腕時計なしで過ごしていたのだが、入社式の前日、電機屋の研修所に向かう途中でついに時計を買った。文字盤にピーターラビットのうさぎさんの描かれた安っぽい女ものの時計だ。会社の方々の前ではまだ恥ずかしいので、腕時計を胸のポケットに入れて過ごしてきた。

昨日。研究所からの帰り道で胸のポケットのうさぎさん時計がないことに気がついた。探しに戻るのも面倒くさいし、いままで腕時計なしで生きてきたのだ。そのまま帰ることにした。

今日。時計なしで研究所に向かう。駅で見た時計からして集合時間は迫っている。しばらく早足で歩く。買ったばかりのうさぎさん時計がないとなんとも落ち着かない。歩いていると、研修でそばの席に座っている女性二人に追い付いた。挨拶のひとつもしながら、そばの方の女性に時間を聞いてみた。

「いま、何時ですか」
「んーと、8時ーい、33分です」

8時40分には間に合うんじゃないですか、とおっしゃる。いやー、時計を忘れてきてしまってね、と照れくさそうに言うと、

「あー、時計ね。まだ机の上にあると思いますよ」

とおっしゃった。はは、はははは。そ、そうかー。それはよかったー。あははー。もう、捨て身のギャグも出ないさ。あははー。うさぎさんはまだいいとして、女ものの時計を大勢に見られちゃ恥ずかしいよなあ。やはし。

カムアウト。

今日。労働組合の説明を受けているときに、アンケートの用紙が配られた。

  1. 名前
  2. 出身学校名
  3. 誕生日
  4. 血液型
  5. 趣味
  6. 理想のタイプ
  7. メッセージをひとこと

てな具合で自己紹介を書くらしい。労働組合の広報誌に載るらしいじゃあないですか。顔写真入りで。去年の例を見ると理想のタイプというのはやはし、理想の異性について書くみたいじゃあないですか。人によっては同性かも知れないですけど。なんか、先人はすごいこと書いてますよ。わたしの知らない有名人の名前だの、体型だの、性格だの書いてますよ。

ある先人のスタイルを真似すれば「髪がピンクで二つに束ねていて背が低くて声が荒木香恵みたいな人」てな感じだが、組合員が読む誌面にこうは書けない。はたまた髪がうす紫色で背中に羽根がついて……ああああ。何を言わせるんだ労働組合R&D支部の人ー。とりあえず髪の色とか声なんかはこっちへ置いといて、その問いには「とんがった人。」と答えておいた。

ああああ。

9 apr(fri)

休み。

四日間の泊まり込みの時の代休で休み。今日は門真の自動車試験場に出向く。試験場の辺りはえらくカオスな世界が広がっている。なんといううらぶれた店たち。三十年は描き換えていないであろう飲食店や写真屋の看板たち。そして、建て替えられてやたらときれいになった試験場の建物。いいものを見た。

日本橋で弟に頼まれていた買い物をする。わんだーらんどにピンキィがあったのだが、買わずに帰る。

10 apr(sat)

三種の神器。

おうちにおっきな冷蔵庫が届いた。扉が五つもある。某社の冷蔵庫ではなく松下の冷蔵庫。父上は会社で冷蔵庫や空調設備のコンプレッサーを作ってらっしゃるので、そこいらへんの関係でアレしてナニして旧製品を安く手に入れる機会を得たらしい。

三菱の十五年ものの冷蔵庫はお払い箱となった。まだ使えるのに。三つも扉があるのに。不況だの残業が減っただの言っても、この家族は浮かれている。

三菱の冷蔵庫が、当時住んでいたおうちにやってきたとき。この頃は円高不況と言われてたんでしたっけか。それから数年経ってから。一時払い養老保険への投資を勧める記事が新聞に載るようになった。小学生だったわたしは夕方の「おかあさんといっしょ」を観る前に夕刊で金の相場を調べるようになった。

両親が百万円単位で株式への投資を始めた。中学生になったわたしは新聞で株価を毎日調べていた。景気はいいらしかったが、労働者の給料が大して上がらないことが気になっていた。金利は低かった。高校生になった。新聞をにぎわすのは地価の上昇だった。大阪のとある商業地は毎年毎年地価が二倍になっていた。

魔法でお金が生まれるご時世、誰がものを作る人になりたいと思うだろう。わたしは小学校のときから考えていたように工学部に入った。あるとき、魔法使いの悪事があばかれるようになった。株価が1/3になった。わたしが大学に入ったとき、卒業するころには景気は良くなると思っていた。六年後。景気はもっと悪くなってしまった。わたしが希望していたおもちゃ屋には就職できなかったが、大昔の念願が今頃かなってしまって、寒い電機業界に足を踏み入れた。

そして今日。おっきな冷蔵庫がおうちにやってきた。どうして扉が五つもあるのだ。今まで使っていた冷蔵庫の二倍も容量があるものをどうして買うのだ。大して食べやしないのに。家は広くならないのに。残業手当が少ないとぼやいているのに。いまのわたしの課題は、両親が「横長のテレビ」や「パソコン」を買ってしまわないようにすることだ。

11 apr(sun)

この本は(略)向け(略)小説の金字塔的作品です。

本屋で「ゆんゆん☆パラダイス」の再版分を見つけたので手にとってみる。絵が別の人になってしまっていたのと値段が高かったのとで買わずに帰る。

家電愛好家。

三菱の六年もののビデオデッキがくたびれてきた。いつか買おうと思いつつ異音を放つビデオを使い続けてきた。最近はときどきテープを滅茶苦茶に巻き込んで台無しにしてしまう。それで近々ビデオデッキを買うことにした。量販店で事前調査をしてみたらば。FEヘッドが付いてないのばっかりじゃないですか。これではつなぎ録りで遊べないじゃないかー。さらなる調査のためカタログをもらって帰る。

15 apr(thu)

続・家電愛好家。

ビデオデッキを買いたいという話の続き。社販という手もあるのだが某社の製品群に欲しいものがない。研修の帰りに家電の量販店に寄る。背広に某社のバッジが付いているのがなんとも気恥ずかしいというかなんというか。で、ビデオデッキが何十台も並んでいるあたりに行ってみる。そしたら店員な人が例によって近付いて来なさる。

やっぱりビデオはビクターですよ、と店員の人。わたしらでもね、自分で買うときはホントにいいと思うものを選びますから。やっぱりビクターですよ。あと三菱がいいですね。それから松下がきて、その次がソニーですわ、と。東芝も入っていたような気がするが、その人のランキングの中には某社は入っていなかった。もしわたしの某社のバッジに気付かれてたんなら恥ずかしい話だ。

で、わりと高価な製品群の前に立っていたものだから高価なものを勧められる。日曜日に別の店で取ってきたカタログを眺めていて、一つ選んだ製品と同じものだった。ビクターのやつで8万円ばかしする。家族の中でわたしは「おジャ魔女どれみ」の録画と再生にしか使わないのだけれど。

ホンマ、ビデオいうたらこれですわ。もう滅茶苦茶飛び抜けてきれいですから。え、そんなにきれいなんですか。そらもう、ビデオの中では(以下省略)。いまやったらうんと勉強させてもろてますんで(電卓叩く)、こんなもんで。税込みで(電卓叩く)82,000円でよろしいわ。しかしまあ、8万円も持っていないのでその場を去る。

ちょっと離れたところに某社のS-VHSが置いてある。これが大特価29,800円で売られているではないですかー。こうやって安売りに向き合うと結構悲しいものが。

なんというか。電機屋が電気屋さんに立ち入ると妙な気分。電機屋にとってはお店は客なのだけれど、今日はわたしが客なのでして。今日は去り際に名刺をもらってしまった。もし名刺を持っていたら、冗談でへんてこな名前の研究所の名刺を置いていきたい心境。いつの日か店員さんに「この大特価29,800円のビデオの(前面のふたを開ける)、ほら見てください。あのチップに入ってるプログラムはわたしが書いたんですよ。34,800円で買いなさい」とか言いたい心境。

17 apr(sat)

へろへろの四文字。

先週、教育テレビの「コレクター・ユイ」が始まったのだが観なかった。で、今週は観てみた。朝の「おかあさんといっしょ」のあとに予告が入っていたのだ。「カードキャプターさくら」のパチもんのように見えなくもない。以前あった教育テレビの夕方のへろへろしたアニメに通じる、なんともいえないへろへろ感が漂っている。へろへろ感を期待して、観てみることにした。

これがまた。本格的にへろへろじゃないですか。これ以上ないくらいにへろへろじゃないですか。「YAT安心! 宇宙旅行」の第2シリーズを上回るへろへろさ。こーりゃわたしが観ないと誰も観ないような気がするので、もうしばらく観つづけよう。せめて、登場人物がもっとちびっちゃければなあ。

で、弟が後半部分だけ録画していた「カードキャプターさくら」第一話も観てみた。うーん、どうするどうする。べつにさくらさんはどうでもいいし、来週出てくるともよさんはどうなんかなあ。迷うぐらいなら観ないでもいいや。

21 apr(wed)

研修。

研修ということで、課題のプログラムを作っとります。これがまた簡単な課題で、池上通信機のデジタルビデオレコーダーのファイルから一枚の静止画像を読み込んであれこれ画像処理で遊んで、bmpで保存するというもの。この課題に一週間もくれた。VisualCの使い方が分からなのでコンパイラとしてしか使っていない。WindowsのAPIもさっぱり分からないので、窓なんか出ない。ぜーんぶコマンドラインから打ち込む実行ファイルの引数で各種の処理を行ってしまうという、変換ツールに徹した仕様。こんなことしてても一日八千円ぐらいくれる。しやわせ。

24 apr(sat)

給料日。

昨日は給料日でして。138,310円がわが手中に。しかし「コレクター・ユイ」の録画予約を忘れていたので、銀行に寄らずに急いで帰る。18時に間に合わせようと、いつもは乗らないモノレールに190円払って乗った。それでも放送開始から15分遅れてしまった。

新しいMacが欲しい。業者からお金を借りるのは手続が面倒くさそうなので、貯金してみることにした。たった3ヵ月の借金で3%も利子を持っていかれるのも気に入らない。ビデオデッキもまだ動くしもうちょっと待つか。

25 apr(sun)

ピンクの店。

弟が、くずはモール街にピンクの店があると言う。ハローキティだのなんだのの店のようだ。今日はそこを覗きに行った。モール街のどこにその店があるのかは聞いていなかったのだが、すぐにその店に出くわした。看板に偽りなし。いたるところピンク。すべからくピンク。たちどころにピンク。

キティちゃんのハンカチからキティちゃんのテレビまで。どこもかしこもピンク色。ところどころに黄色や赤色をした別のキャラクターが。ひととおり見て回ったが、昨日ニッセンの通販のカタログで見つけたキティちゃんの香水はなかった。ただ、キティちゃんの時計に心惹かれる。時計もたくさんあるのだが、キティちゃんの型に抜かれたアルミの文字盤を持つ5,000円の時計が目に止まる。いつまでもこの店にいると間違いなくこの時計を買ってしまいそうだ。さっさとくずはモールを後にする。

あの人は、おかしのほかはぜったいに、めしあがらないのさ。

帰りに本屋さんに寄る。なんとなく福永令三の「クレヨン王国の十二か月」と「クレヨン王国シルバー王妃花の旅」と「クレヨン王国新十二か月の旅」を買ってみる。クレヨン王国はアニメも終わってしばらく経つので、もう原作を読んでもよかろうと。

もう一つ。いままでだったら本を買うか買わないかのしきいを超えられないことが多かったが、いまは違う。財布の中に一万円札が9枚も入っているのだ。いやーん。こんなのってはじめてー。三冊で2,000円も使ってしまった。次からは古本屋に行こう。

市議会議員と市長の選挙の投票に行ってから家に帰り着く。「クレヨン王国の十二か月」を開くと、お美しい銀髪の王妃の姿が。めくるめく偏食の世界が。

みどころ。

  1. ありさんに風邪薬と間違えてDDTを渡したことに気付くところ。
  2. 「やめて! ひゃあっ! いたい! いたい!」
  3. 「あああ、とれない、どうしてもとれない!」
  4. あまり、王妃が美しかったので。
  5. 捕らえたこいのぼりを処刑しようとするところ。
  6. 実は料理上手。
  7. うっかり。
  8. 青い水着。
  9. 刑務所でも痛がる王妃。
  10. 夫婦。
  11. カンガルーの母親に尻を打たれそうになるところ。
  12. 実は剣豪。

アニメのシルバー王女が童話では王妃だった、なんてことはいまやどうでもいい。童話でもやけに王妃がかわいいのですな。童話の登場人物だけあってやけに子供じみていて人妻とは思えないあたりがなんとも。とんがってて。少女まんがにありがちな「主人公の意地悪なライバル」みたいなところがよい。

30年も前に書かれていたのだ。王妃というよりも「最近の若者」とも言える女性を。当時この薬物がまだ使われていたのか、あるいは社会批判のために書いたのかはわからないけれど、王妃がDDTを持っていたり。月面で午前2時までテレビを観ていたり。この話の書かれた当時は平均的には日本人は今よりも貧しかっただろうが、今となってはシルバー王妃はどこにでもいる浪費家の女性なのだ。

ときおり現れる見なれない言葉づかいとDDTという薬物以外はちいとも古くない。一年がかりの旅は12に分けられていて240ページを飽きさせない。なにかと12という数にこだわったのはきっと小さい読み手の心に強く残っただろう。

ところで、今日は本屋さんで見つからなかったけれど「クレヨン王国超特急24色ゆめ列車」ってもしかするとアニメに出てきた列車の旅の話なんでしょうかね。シャカチックとユックタックの出てくる話なんでしょうかね。もしそうだったら、もう逃がさなくてよ。



あずまにおっしゃりたいことがありましたら お手紙ください
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